新型コロナにステロイド系抗炎症剤が有効か、重症患者の死を大幅に減らせる可能性
新型コロナウイルスに感染した重症患者の命を救える可能性があるとして、イギリスの専門家らが、安くてすでに多く利用されている薬に注目している。
「サイトカインストーム」を抑制
その薬とは、ステロイド系抗炎症剤の「デキサメタゾン」だ。この薬はすでに「関節炎」や「喘息」「皮膚炎」などで、主に「サイトカインストーム」と呼ばれる免疫機能の過剰反応を抑制するものとして使われているという。
そして新型コロナ感染症の重症患者の場合、この「サイトカインストーム」を起こすことによって死亡するケースが多いと考えられてきた。
しかし今回、この薬の世界規模での臨床試験が行われ、人工呼吸器に繋がれた重症患者の死亡リスクを3分の1、酸素吸入を必要とする患者の死亡リスクを5分の1に減らすことができたそうだ。
「画期的な突破口」
オックスフォード大学が行った臨床試験では、「デキサメタゾン」を与えられた2000名の入院患者と、与えられていない4000人との容態を比較したという。
その結果、人工呼吸器を装着した患者の場合、40%から20%まで死のリスクを削減、酸素吸入を必要とする人でも、25%から20%まで死亡リスクを減らせたそうだ。
この臨床試験のチーフを務めたPeter Horby教授は「これは死者を減らすことができることを示した、今までで唯一の薬です。しかもそれは致死率を大幅に下げる。これは画期的な突破口です」と語っている。
またイングランド首席医務官クリス・ウィッティー教授も、「この発見が世界中で人命を救う」と評価している。
5000人の重症患者の命を救えた可能性
この薬を使った治療は最大で10日間、患者1人につき1日で5ポンド(約670円)しかかからない。
このため新型コロナの患者が多い、より貧しい国にも大きなメリットをもたらすと考えられている。
またもしイギリスで、新型コロナウイルスのパンデミックの初期からこの薬を使っていれば、最大で5000人の命を救うことができた可能性があるとか。
ただしこの薬は呼吸の補助を必要としない患者(軽症者)には、あまり効果がないと見られている。(了)
出典元:BBC:Coronavirus: Dexamethasone proves first life-saving drug(6/16)