約5000年前の頭蓋骨に治療の痕跡、最古の手術が行われていた可能性
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先週発表された研究論文において、約5000年前から人間の頭部に手術が行われていた可能性が示された。
2018年に発掘された頭蓋骨を分析
この研究を行ったのは、スペインのバジャドリード大学の研究者らだ。
彼らは、2018年にBurgos市近郊の遺跡「エル・ペンドニスのドルメン(Dolmen of El Pendónis)」において発掘された、頭蓋骨を分析した。
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「エル・ペンドニスのドルメン」は初期人類が葬儀場として使用した場所とされ、発見された頭蓋骨は約5300年前のもので、耳のすぐ後ろに位置する乳様突起の骨の両側に、2つの穿孔が見つかったという。
研究者は、人間に行われた最古の耳の手術の証拠だと考えている。
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乳様突起切除手術を受けた可能性
乳様突起の骨には乳様気室(air cell)があり、その骨は耳の繊細な構造を保護し、耳圧を調整、また外傷の際に頭蓋骨の側頭骨を保護する役割を果たすと考えられている。
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そして科学者たちは、この頭蓋骨が乳様突起切除手術を受けた可能性を示す痕跡を見つけたという。これは、先史時代の人が炎症による痛みを和らげるために行ったと思われる外科的処置だと考えられるそうだ。
特に、左耳の片側にある切り傷は、この人物に外科手術が行われたことを示しており、手術を受けたのは35歳から50歳の女性で、しかもその後も数カ月間は生き続けた可能性があるという。
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バクテリアの増殖で引き起こされる感染症
このような感染症(恐らく乳様突起炎)は、しばしば中耳炎の治療が不十分な場合、バクテリアなどの病原体が中耳の周辺にある乳様突起に、増殖して広がることで引き起こされるそうだ。
そして放置すると乳様突起のハニカム構造が感染物質でいっぱいになり、破壊されることが知られている。
またこの場合、難聴、血栓、髄膜炎、脳膿瘍など、時には生命を脅かすような深刻な健康被害を引き起こすことがあるという。
研究者らは「先史時代の外科医は、おそらく肉眼で感染が確認できた(赤く腫れることで知られる)ので、問題の部位を特定し、うまく介入したのです。そして両方の乳様突起の骨の再生が観察されたことにより、(手術の成功が)証明されたのです」と述べている。(了)
出典元:INDEPENDENT:Earliest evidence of ear surgery found in 5,300-year-old skull by archaeologists(2/26)