53歳の女性の皮膚細胞を、30歳ほど若返らせることに成功
研究者が、女性の皮膚細胞を若返らせることに成功し、将来的には他の細胞組織での活用が期待されている。
化学物質にさらす期間を短縮
この研究を行ったのは、イギリス・ケンブリッジ大学バブラハム研究所の、科学者たちだ。
彼らは53歳の女性の皮膚細胞にIPS技術を用い、化学物質にさらす期間を50日から約12日に短縮したという。
その結果、この細胞が胚性幹細胞に変化せず、23歳の人間から採取したかのような外観と性質を持つ皮膚細胞に若返っていることを発見したそうだ。
クローン羊「ドリー」の技術が起源
今回の研究の起源は、「ドリー」と呼ばれるクローン羊の誕生に使われた技術にさかのぼる。
「ドリー」の場合は、羊から採取した成体の乳腺細胞を胚に変える方法を開発することで、クローンを生み出すことに成功した。
その後、「ドリー」の技術は、2006年に京都大学の山中伸弥教授が発見したIPS細胞によって、よりシンプルになっていく。
IPS細胞では、成体細胞を化学物質に約50日間曝すことによって遺伝子が変化し、成体細胞が幹細胞に巻き戻せることが明らかになった。(もっと短期間で作れるとの報告もある)
そして今回は化学物質にさらす期間を短くすることで、胚性幹細胞に変化せず、細胞の若返りに成功したという。
加齢に伴う病気の治療法に期待
もっとも今回の研究の目的は、羊や人間のクローンを作ることではない。いわゆる人間の胚性幹細胞を作るための技術を用いることだった。
また今回の研究の最終的な目標は、同様の方法を用いて、糖尿病や心臓病、神経疾患など加齢に伴う病気の治療法を開発することだとされている。
ただしバブラハム研究所のウルフ・ライク教授によれば、今回の研究は非常に初期段階のもので、研究室から臨床の場へ出ていくためには、まだ克服すべき科学的な課題があるという。
ただしライク教授は「細胞の若返りが可能であることを初めて証明したことは、重要な前進です」と述べている。(了)
出典元:BBC:Rejuvenation of woman’s skin could tackle diseases of ageing(4/7)