身元不明の遺体「ジェントルマン」、最新科学で28年前の未解決事件に大きな進展
28年前、北海で引き上げられた男性の身元を解き明かす作業が進められ、大きな進展があったようだ。
英の中流階級の姿をした男性
その男性の遺体は、1994年7月11日、ドイツの小さな群島ヘリゴランドの西で、国境警備のボートによって引き上げられたという。
遺体には頭部と上半身に傷があり、鋳鉄製の重しが付けられていたことから、誰かに故意に傷つけられたと考えられていたそうだ。
この男性は、「マークス&スペンサー社」のストライプの純毛ネクタイ、イギリス製の靴、フランス製のネイビーのズボン、襟付きの水色の長袖シャツという「中流階級」の服を着ていたことから、「ジェントルマン」というあだ名が付けられた。
そして遺体はドイツのヴィルヘルムス・ハーフェンに運ばれ、検死された後、埋葬されたという。
45歳から50歳、体重は70キロほど
1990年代にドイツ警察が行った最初の調査では、彼は45歳から50歳くらいで、生きている時の体重はおそらく約70kgから76kg、痩せた体格で、身長は約1.9mだったとされている。
しかしそれ以外の情報は得られておらず、28年間も身元不明のままとなってきた。
ところが最近、イギリスのパースにあるマードック大学の犯罪学と法医学の学生が参加する未解決事件調査チームが、驚くべき突破口を開いたという。
MU forensics students have delivered a twist that has brought a decades-old European murder investigation to Australia. Working with translated case files and attending late night teleconferences, they have uncovered an astonishing piece of the puzzle. https://t.co/NKsT37RlWM pic.twitter.com/2YBfsL4sKS
— Murdoch University (@MurdochUni) August 5, 2022
骨の同位体を分析
この未解決事件調査チームは、男性の遺体を発掘し、骨のサンプルを使って同位体の割合を分析。その結果、彼が人生の大半をオーストラリアで過ごした可能性が「非常に高い」ことが明らかになったという。
そもそも食物、水、塵の同位体組成は、気候、岩盤、土壌、人間活動の違いによって地球上で異なる。このため、それらを摂取した人間の組織の同位体組成も異なるそうだ。
つまり同位体組成は、その人が何を食べ、何を飲み、何を吸って生きてきたかを示すことで、その人がどこで、どのように生きてきたかを知る手がかりとなるという。
マードック大学の研究チームは、この身元不明者のDNAプロファイルを完全に分離することにも成功。国内外のデータベースと照合することができるようになった。
その結果、「ジェントルマン」と呼ばれた男性がオーストラリアで過ごしていた可能性が浮上。
現在研究者らは、オーストラリアでの事件の進展のために、ドイツ当局を支援するために法執行機関のコネクションを利用するなどし、協力しているという。(了)
出典元:INDEPENDENT:Mystery of body found in North Sea nicknamed ‘The Gentleman’ may have been solved 28 years on(8/7)