世界初の新しい遺伝子療法により、白血病患者の治療に成功【イギリス】
イギリスで新しいタイプの遺伝子療法が施され、T細胞白血病の若い患者が回復途上にあるという。
6カ月間も症状が緩和
その若い患者とは、イングランドのレスターに住む少女、アリッサさん(13)だ。
彼女はT細胞白血病にかかり、化学療法と骨髄移植を受けたが成功せず、再発してしまったという。
しかもこれ以上の治療法はなく、アリッサさんの未来に暗い影を落としていたそうだ。
しかし「塩基編集(base editing)」と呼ばれる新しい技術で変異させたT細胞を注入したところ、アリッサさんは回復。現在まで6カ月間も症状が緩和しているという。
6 months ago, after all other treatments for T-cell acute lymphoblastic leukaemia had failed, Alyssa became the first person in the world to receive base-edited cell therapy as part of a clinical trial at GOSH & @UCLchildhealth. Meet Alyssa & the research team behind the trial 👇 pic.twitter.com/YwCQfnCJux
— Great Ormond Street Hospital (@GreatOrmondSt) December 11, 2022
T細胞を殺せるように変化
T細胞白血病は、T細胞として知られる白血球の一種を侵す癌とされている。
この病気ではT細胞は適切に発達せず、急速に成長するため、体内の血球の成長を妨げるという。
標準的な治療法としては、骨髄移植や化学療法があるが、アリッサさんの場合、これらは病気の進行を止めることができず、緩和ケアしか選択肢がないように思われた。
しかし「塩基編集」という技術を使い、健康なドナーから採取したT細胞を、白血病細胞を含む他のT細胞を殺せるように変化させたという。
この「塩基編集」という技術は、人の遺伝暗号を構成する数十億の文字のDNAに、1つの変化を加えることができるそうだ。
患者10人を対象に臨床試験を準備
アリッサさんを治療したロンドンの「グレート・オーモンド・ストリート病院(Gosh)」のチームは、同じく従来の治療法をすべて使い果たしたT細胞白血病患者10人を募集し、さらなる臨床試験の準備をしているという。
これが成功すれば、他の種類の白血病や他の病気に罹患している患者にも、「塩基編集」された細胞が投与されることが期待されている。
このプロジェクトのリーダーの1人である免疫学者のワシーム・カシーム教授は、次のように述べている。
「これは我々がこれまでに行った最も高度な細胞工学であり、他の新しい治療法への道を開き、最終的には病気の子供たちにより良い未来をもたらします」(了)
出典元:The Guardian:Revolutionary gene therapy offers hope for untreatable cancers(12/11)