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科学者がAIを使い、スーパーバグを殺せる抗生物質を発見

科学者がAIを使い、スーパーバグを殺せる抗生物質を発見
McMaster University

科学者が人工知能(AI)を使い、薬に耐性をもつ病原菌に対抗できる、新しい抗生物質を発見した。

 

耐性菌を殺せる抗生物質

 

この研究を行ったのは、カナダのマックマスター大学や、アメリカのマサチューセッツ工科大学の科学者グループだ。

 

5月25日に科学雑誌「Nature Chemical Biology」において掲載された研究によると、彼らはAIを使い、致命的な病院内のスーパーバグ(超多剤耐性菌)を殺すために使用できる新しい抗生物質を発見したという。

 

このスーパーバグとは、「アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)」のこと。

 

これは世界保健機関(WHO)により、「優先病原体」の中で「重大な」脅威として分類されており、「優先病原体」とは人間の健康に「最大の脅威」をもたらす細菌群とされている。

 

他の細菌が薬剤耐性を持つよう伝達

 

WHOによれば、「アシネトバクター・バウマンニ」は治療に抵抗する方法を見つける能力を内在しており、他の細菌が薬剤耐性を持つようにする遺伝物質を伝達することができるという。

 

このため、この細菌は、病院や老人ホームにいる人々、人工呼吸器や血液カテーテルを必要とする患者、手術で傷口が開いている患者にとって脅威になるそうだ。

 

しかも「アシネトバクター・バウマンニ」は、共有された機器上で長期間生き続けることができ、汚染された手や血液感染により、尿路や肺の感染症を引き起こす可能性があるという。

 

6680の化合物を分析、9つに絞り込む

 

今回、研究者はAIモデルを訓練した後、それを使って、これまで遭遇しなかった6680の化合物を分析。解析には1時間半を要し、最終的に数百の化合物が生成され、そのうちの240が実験室でテストされたという。その結果、「abaucin」を含む9種類の抗生物質の候補が見つかったそうだ。

 

さらに、「abaucin」の分子をマウスの創傷感染モデルでテストしたところ、この分子が「アシネトバクター・バウマンニ」の感染を抑制することを発見した。

 

本研究を主導したマックマスター大学生物医学・生化学科のジョナサン・ストークス助教授は、次のように述べている。

 

「今回の成果は、新しい抗生物質の探索における、機械学習の利点を検証するものです。AIを使えば、化学空間の広大な領域を迅速に探索することができ、根本的に新しい抗菌分子を発見する可能性が大幅に高まります」(了)

 

出典元:The Guardian:Scientists use AI to discover new antibiotic to treat deadly superbug(5/25)

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