メキシコ湾流の循環システムが、2025年までに崩壊する可能性
世界最大の暖流があと数年で停止する可能性が、新しい研究で示唆された。
北アメリカの東海岸を流れていく暖流
その暖流とは、メキシコ湾流だ。これはメキシコ湾に端を発し、フロリダ半島の周りを反時計回りに周って、北アメリカ大陸の東海岸の沖合を北東に向かって流れていく海流だ。
メキシコ湾流は、太平洋の黒潮と同じように、世界で最大の暖流とされている。
しかしデンマーク、コペンハーゲン大学のPeter Ditlevsen教授が率いた新たな研究により、メキシコ湾流の仕組みが早ければ2025年にも崩壊する可能性が指摘され、気候に壊滅的な影響をもたらすことが示唆された。
氷河期時代に循環が停止
メキシコ湾流は大西洋子午面循環(Amoc)とも呼ばれているが、すでに地球温暖化の影響により、過去1600年間で最も弱くなっていることがすでに知られており、研究者たちは2021年に、転換点を迎えたとする警告すべき兆候を発見したという。
しかし新しい研究では、世界的な炭素排出量が削減されなければ、2025年から2095年の間に、湾流の循環が停止すると推定された。
Amocは過去にも循環が崩壊したことがあり、その際気温が10℃変化したが、それは氷河期時代に起きたと考えられている。
もっとも他の科学者らは、転換点がどのように生じるかについての仮定や、基礎となるデータの不確実性があまりにも大きすぎるため、転換点の時期を信頼できるものとして見積れないと考えているという。
ただしAmoc崩壊の可能性は極めて懸念すべきものであり、炭素排出量の削減を急がねばならないと、全員が考えているそうだ。
世界中に悲惨な結果をもたらす可能性
Amocの海流は、暖かい海水を北へ北へと運び、そこで冷えて沈み、大西洋の海流を動かしているという。
しかし、加速するグリーンランドの氷冠(山頂部を覆う氷河)の融解や他の要因などによる淡水の流入は、この海流をますます抑え込んでいるそうだ。
そしてAmocが崩壊すれば、インド、南アメリカ、西アフリカで雨が大幅に減少し、何十億もの人々が食料を得ることもできず、世界中に悲惨な結果をもたらすと考えられている。
またヨーロッパでは暴風雨が増加し、気温も低下。北米東海岸では海面上昇につながり、アマゾンの熱帯雨林や南極の氷床もさらに危険にさらされる可能性があるという。(了)
出典元:The Guardian:Gulf Stream could collapse as early as 2025, study suggests(7/25)