南極に生息する皇帝ペンギンのヒナ、数千羽が死亡か?海氷の減少が原因
南極に生息する、数多くの皇帝ペンギンのヒナが死んだ可能性が、ある研究によって指摘されている。
壊滅的な繁殖の失敗
この調査の対象になったのは、南極大陸の4つのコロニーに住んでいた皇帝ペンギンたちだ。
これらの皇帝ペンギンは、記録的な海氷の低さにより、2022年後半に「壊滅的な繁殖の失敗」を引き起こし、数千羽のヒナが死亡した可能性が高いと明らかになった。
衛星画像を分析したところ、通常は安定している海氷が崩壊し、ヒナの羽毛が生えていない時期に、コロニーが消滅したことが判明したという。
発表された研究結果には「南極大陸の西側にあるベリングスハウゼン海での『繁殖の失敗』は前例がなく、広い地域にまたがる複数のコロニーが、1シーズンに全て繁殖に失敗したのは初めてのことだ」と述べられている。
海氷の減少が想像より早かった
イギリス南極地域観測所の研究者であり、この研究の主執筆者であるピーター・フレットウェル博士も、次のように語っている。
「私はショックを受けました。このかわいい、ふわふわのヒナが大量に死ぬなんて、とても考えられません。私たちは長い間、この事態を予測していました。海氷の減少は前例がなく、私たちが想像していたよりもはるかに早かったのです」
今回の研究では、2022年10月下旬から12月上旬にかけて、南極大陸のヴェルディ入江、スマイリー島、ブライアント・コースト、プフログナー・ポイントのコロニーで、海氷が割れていく様子が観測されたという。
その後、この地域の多くの場所で、海氷がほぼ完全に失われ、フレットウェル博士もこの地域で7000羽ものヒナが死んだと推定している。
フレットウェル博士によれば、足元で海氷が割れ、水没すればペンギンのヒナは溺死し、また防水羽毛がないため凍ってしまうという。
ただこの地域の1つのコロニー、ロスチャイルド島では、氷山が氷を安定させ、ヒナが羽化するチャンスを与えたため、繁殖が成功した可能性があるそうだ。
南極大陸で確認されている62の皇帝ペンギンのコロニーのうち約30%が、2018年以降、海氷の一部または全部の消失の影響を受けており、研究者たちも「皇帝ペンギンは海氷に非常に依存しているため、地球温暖化のもとでは不確実な未来に直面している」と述べている。(了)
出典元:The Guardian:Emperor penguins: thousands of chicks in Antarctica likely died due to record-low sea ice levels(8/25)