なぜ、現代のヨーロッパ人にはネアンデルタール人の遺伝子が少ないのか?
現代のヨーロッパ人は、ネアンデルタール人の遺伝子の割合が少ないと言われているが、その謎を解くための研究が進められた。
東アジアでは、遺伝子が8%から24%多い
そもそもアフリカ以外の地域に住む全ての人間には、ネアンデルタール人のDNAが少しばかり残っているという。
ただ、東アジア人の祖先を持つ人々は、ヨーロッパ人の祖先を持つ人々よりも、8%から24%多く、ネアンデルタール人の遺伝子を持っているそうだ。
しかし、化石からもネアンデルタール人がヨーロッパに住んでいたことが分かっているのに、なぜヨーロッパ人にネアンデルタール人の遺伝子が少ないのか、については謎のままだったという。
2度の移住により希釈か
そこでこの謎を解くための研究が行われたのだが、研究論文の筆頭筆者で、オックスフォード大学の生態学・進化学の博士研究員であるクラウディオ・キロドラン氏は、その理由について「単なる移住」だと述べている。
少なくとも4万年前に、当時狩猟民族であったホモ・サピエンスは、アフリカから移住し始め、ネアンデルタール人と交配したという。
またその後、1万年前にも再び、ホモ・サピエンスが移住をはじめたが、その集団は新石器時代の農耕民で、彼らは中東や南西アジアからヨーロッパへ移住したそうだ。
やがてその農耕民は、ネアンデルタール人と交配した採集狩猟民とも交配し、よりネアンデルタール人の遺伝子が希釈されることになった。
一方、6万年から7万年前までに東アジアに定住したホモ・サピエンスも、ネアンデルタール人と交配したが、その後同様の農耕民の流入がなかったため、遺伝子の希釈が起きなかったと考えられている。
4464人分のゲノムを調査
人類とネアンデルタール人の関係の歴史をたどるために、キロドラン博士らは、4万年前から今日まで、4464人の古代人から現代人のホモ・サピエンスのゲノムを調べ、ネアンデルタール人のDNAの割合を緯度、経度、時間、地域との関係で調べたという。
その結果、解剖学的には、現生人類におけるネアンデルタール人のDNAの割合は、初期にはアジアよりもヨーロッパで高いことが判明したそうだ。しかしその後、ヨーロッパ人におけるネアンデルタール人の遺伝子が減少したという。
特に顕著だったのは、ヨーロッパの狩猟採集民と、約1万年前にヨーロッパに定住するようになった新石器時代の農耕民との違いだ。
ヨーロッパの狩猟採集民は、新石器時代の農耕民よりもネアンデルタール人の遺伝子の割合が高く、このことは農耕民の移動の波が、ヨーロッパにおけるネアンデルタール人の遺伝子を希釈したことを示唆している。
一方、東アジアには同じような移民の流入はなく、東アジアの遺伝子がヨーロッパと同様に希釈されることはなかったそうだ。(了)
出典元:Livescience:Scientists finally solve mystery of why Europeans have less Neanderthal DNA than East Asians(10/18)