北極圏にあるイヌイットの村で教えるカナダ人女性が、世界の最優秀教師に選ばれる
3月19日、今年の「グローバル・ティーチャー賞」の最優秀教師にカナダ人の女性が選ばれ、100万ドル(約1億1200万円)の賞金が授与された。
●若者の自殺率が高い小さな村
その女性とはMaggie MacDonnellさん。彼女はカナダの北極圏にあるSalluitというイヌイットの村で、多くの教師が途中で辞めていく中、6年間も教壇に立って子供たちに教えてきたという。
しかし住民が1300人の小さな村では、女性が10代で妊娠するのが普通で、性暴力の割合も多く、若者の自殺率が非常に高いと言われてきた。
実際にMacDonnellさんも赴任してから10人の自殺者に遭遇しており、そのうちの6人は18歳から25歳までの男性だったそうだ。
彼女は動画の中で「私の生徒のお葬式に出たことは、これまでに経験した最もつらい出来事の1つです。だから私は決して二度と同じ立場にはなりたくないと考えています」と語っている。
●自殺願望と戦うためにプログラムを作る
そんな中でMacDonnellさんは、学校においてライフ・スキル・プログラムを実施。仕事に関しての助言を行うメンター制度を導入し、子供たちに健康な食事を提供する基金も創設したという。
また今年はアート・プロジェクトにも専念。生徒が自分自身をアートで表現することで、セラピーのような効果があるとしている。
4年間も続けている最も重要なプロジェクトでは、毎日生徒たちが健康なお菓子を自分たちで作り、学校全体に配ってきたそうだ。
MacDonnellさんは動画の中で次のように語っている。
「私の目標は、生徒自身が運命の主人公になるために、必要なツールを与えることです。そして生徒らに柔軟性や希望を養ってもらい、自分の信念を打ち立てるためのプログラムを作りました。これらのツールは自殺願望と戦うために組み合わさっています」
●コミュニティと積極的に関わるよう促す
同時にMacDonnellさんは生徒らがコミュニティと積極的に関わるために、彼らに慈善活動を行うよう促し、デイ・ケアセンターなどで幼い子供たちの世話をする取り組みも行ってきたという。
その結果、生徒らは多くの自信を得て、自らを尊重し、働くことの価値と意味を得ることができるようになったそうだ。
さらに厳しい冬や孤立状態が続く環境のためにドラッグやアルコール依存の割合が高い村において、大人や若者のためのフィットネスセンターを作るなど、直接コミュニティにも貢献してきたという。
地元の開業医の女性は動画で「多くの若い人たちが、MacDonnellさんのもとへ行って話をします。なぜなら若い人たちは皆、彼女を信頼しているからです。私もMacDonnellさんが、コミュニティにとって非常に貴重な人だと考えています」と語っている。
●生徒の人生を大きく変えたと評価
3月19日、アラブ首長国連邦のドバイで開かれた「グローバル・ティーチャー賞」のセレモニーでは「生徒たちの人生を大きく変え、コミュニティにも変化をもたらした」と評価され、MacDonnellさんが最優秀教師に選ばれた。
彼女は取材に対して「私はこの村に来るまで、これがカナダの現実とは知りませんでした。世界の目を彼らに向けてくれてありがとう」と述べている。
また賞金については、イヌイットの若者のため環境問題に取り組む非営利団体を創設することに使いたいと考えているそうだ。
●2万人の教師の中から選ばれる
この「グローバル・ティーチャー賞」は教育界のノーベル賞とも呼ばれ、3年前にドバイを拠点とするVarkey基金によって創設されたという。
179カ国、2万人の候補者の中から10人のファイナリストが選ばれ、最後に最優秀教師が1人だけ選出される。
昨年はパレスチナ人のHanan al-Hroubさんが受賞しており、彼女はヨルダン川西岸に住むパレスチナの子供たちに、遊びを通して学校や家庭での暴力行為を減少させる指導プログラムを実践してきたそうだ。(了)
出展元:the guardian:Canadian wins $1m Global Teacher Prize for work with Inuit students(3/19)
出展元:abc NEWS:Canadian wins $1M global teacher prize for work with Inuit(3/19)