子供のそばで暮らすために…裏庭に建てられる高齢者向け住宅に注目集まる
年を取り体が不自由になった人が快適な暮らしを送るため、高齢者向け施設の存在は欠かせなくなっている。
しかし、日本同様に高齢者の数が増加している米国においては、今高齢者向け施設に代わり裏庭に建てることのできる住宅が注目を集めている。
裏庭に建てることで安全かつ自立した生活が可能
高齢者向け住宅の代替策として、今米国で注目を集めているのが「Accessory Dwelling Unit(ADU)」(=付帯住宅の意)というものだ。
これは裏庭に建てることを想定した住宅であり、高齢となった両親が自立しつつも子供の近くで安全に暮らすことを目指す、というもの。
中でも比較的安価にこの住宅を提供するスタートアップとして今、注目を浴びているのが米国企業「Dweller」だ。
同社のCEO、Patrick Quinton氏によると、DwellerではADUを12万5000ドル(約1400万円)で販売、あるいは1200~1500ドル(約13万4000~16万8000円)で賃貸を行っているという。
Dwellerによる実際のADUとは?
それではDwellerが手掛けるADUとは、どんなものなのだろうか。
同社が手掛ける一般的なADUは、約42平方メートルと小ぶりながら、寝室にバスルームと日常生活に必要な最低限の設備は完備されている。
住宅の所有者は壁の色や戸棚、台所の調理台など、細かいデザインも選択することが可能だという。
さらに同社は、半年以内にさらに小さく安価な住宅をも提供するとしている。
しかもこれだけ住宅としての設備が整っていながら、DwellerによるADU建設にかかる期間はなんと1カ月以下。
契約から実際の入居までにかかるおよその期間も、わずか4カ月ほどという。
ちなみに住宅の建設は工場で行われ、完成した後にクレーンによって裏庭に設置されるとのことだ。
ポートランドでADU設置が進む背景とは
一方、現在DwellerによるADUの設置が進められているのはオレゴン州ポートランド市を中心とするポートランド都市圏のみ。
同社は来年には、米国の各都市にADUの設置を進めていきたいとしている。
しかし、他方でポートランド都市圏においてADU設置が進むのには、高齢者問題のみならず同都市ならではの事情もある。
ポートランド都市圏では、近年住宅危機が深刻化。中型住宅であっても、その価格は46万9000ドル(約5247万円)ほどもするという。
しかも、現在同都市圏で販売されている住宅の多くは一戸建て住宅。そこに目を付け、裏庭を活用したADUを設置するという打開策を編み出したのが、Dwellerだ。
住みやすくも高価格の住宅に転居することができず、生まれ育ったコミュニティの中で暮らし続けることを願うお年寄りに、新たな選択肢を与えることに成功したわけだ。
同社CEOのQuinton氏はこれについて、「我々の住宅は家族に対し、近隣に生活空間を付け加え、もし必要あれば介護や監督を供給するという機会を提供するものだ」と説明する。
「この方法により、年老いた両親が子供の近くに長きにわたって住むことが可能となる」
ちなみにQuinton氏は、ポートランド開発委員会(Portland Development Commission)の前エグゼクティブ・ディレクターを務めていたことでも知られている。
一方、高齢者が入居することを想定して考案されたDwellerのADUであるが、これに対しては若い人からも多くの関心が寄せられているという。
広い裏庭を持つ一戸建て住宅が一般的ではない日本の都市圏において、Dwellerが提供するようなADUが高齢者の入居先として普及するかといえば、疑問符が付く。
しかし広い敷地を有する一戸建てに暮らしながら、高齢の両親と離れて暮らす人などは、将来的にADUのような住宅を考えてみてもよいのかもしれない。(了)
出典:Business Insider :A startup is building $125,000 backyard ‘granny flats’ that can be constructed in less than a month(7/27)
出典:ACCESSORY DWELLING STRATEGIES:Backdoor Revolution The Definitive Guide to ADU Development