日本企業が東京に世界一高い木造ビルを建設するとして海外でも話題に
日本企業が東京に“世界一高い木造ビル”を建設するとして、海外で話題を集めているのをご存じだろうか。
完成すれば日本国内で最も高いビルに
東京で“世界一高い木造ビル”の建設を計画するのは住友林業。
同社の発表によると、この計画は創業から350年を迎える節目の年である2041年を目途に、東京に木造ビルを建設するというもの。
ビルの高さは創業からの年数に合わせ、地上350メートルで70階建てとなる予定で、この構想の名もずばり「W350計画」だ。
完成すれば地上300メートルの「あべのハルカス」を凌ぎ日本国内における最も高いビルとなると共に、世界で最も高い木造建築によるビルになるという。
同社はこの計画について、“高層建築物の木造化・木質化と街を森にかえる環境木化都市の実現”を目指すものであるとしている。
またビルの設計にあたっては日建設計も協力。
木材が全体の建築材の9割を占めながらも、柱と梁に鋼材のブレースを入れる“ブレースチューブ”と呼ばれる構造により、強風や地震といった日本ならではの天災にも耐えられるものになるとのことだ。
木造建築としては世界でも群を抜く高さ
世界では近年、木造建築による高層ビルの建設が相次いで計画されてきた。
その中でも現在まで世界で最も高い木造ビルとなっているのは「ブロックコモンズ」と呼ばれ、昨年秋に完成したばかりのカナダにあるブリティッシュコロンビア大学の学生寮だ。
約400人を収容できるというこちらの学生寮は18階建てで、高さも58.5メートルにも及ぶという。
And the winner is… Architect: Acton Ostry Architects Inc., Vancouver for Brock Commons – Tallwood House #WoodWorks #WDA @actonostry Sponsored by @Structurlam pic.twitter.com/kysmRX3KVd
— Wood WORKS! BC (@WoodWORKSBC_CWC) February 27, 2018
一方、その中においても住友林業が手掛けることとなる木造ビルの高さは、群を抜いている。
建築設計会社「リカルド・トッサーニ・アーキテクチャー」を設立し、国内最大の木造建築物による高齢者住宅のデザインを手がけたリカルド・トッサーニ氏は、「建築技術と木材の混成における技術的進歩は、今非常に面白い分野だ」という。
木造建築の長所、短所とは
「世界の日本人デザイナーと建築家は、木材を建築材として利用するベストな方法を探ることに熱意をかけてきた。しかしその一方、日本には非常に保守的な防火規定が存在し、木造での2階建てや3階建て以上の建物の建築における進歩を極めて困難とさせてきた」と指摘するトッサーニ氏。
かつて木材は日本では建築材の主流として用いられてきたが、第二次大戦時の爆撃により、木造建築による建築物の多くが焼失。それを教訓とし、火力への耐性に欠ける木材は嫌厭されるようになってきた。
その一方で、トッサーニ氏は木造建築が日本の建築材としては適したものであることも指摘する。
「日本においては木材は素晴らしい建築材だ。なぜなら木材は簡単に入手できると共にしなやかで、地震の多い環境には適している」とし、さらにしなやかさに欠けるコンクリートは地震の際には崩れやすいともしている。
木造建築としては群を抜いた規模で建設されることとなる住友林業の木造ビル。2041年の完成まではまだまだ時間があるが、その行方を見守りたいところだ。(了)
出典:Telegraph.co.uk:Japanese company plans world’s tallest wooden building(2/14)
出典:住友林業:街を森にかえる環境木化都市の実現へ 木造超高層建築の開発構想W350計画始動(2/8)
出典:日本経済新聞:「高さ世界一」 日本の先行くカナダ18階高層木造 (2017/6/23)