英国での新型コロナのワクチン研究が新たな段階に、一方で成果には疑問の声も

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新型コロナウイルスの感染拡大は今も各国で続き、世界ではワクチン開発に向けた研究が進んでいる。

そのような中、英国での研究が臨床試験を含む新たな段階に入るとして、その成果に大きな注目が集まっている。

最大1万260人もの治験者募集し効果を判断

英国で新型コロナウイルスのワクチン開発に向け研究を進めるのは、オックスフォード大学の研究チームだ。

同大学では1月よりチンパンジーから採取されたウイルスを用いてワクチン開発に向けた研究が行われており、その第一段階においては18歳から55歳までの健康的な160人のボランティアに対する治験が実施された。

その第二・第三段階となる治験を行うため、オックスフォード大学では今回臨床試験に協力する希望者を英国内から最大で1万260人も募集し、高齢者や子供をも含む第一段階よりもより広範な年齢の人に対する試験を行うとしている。

この第二・第三段階の試験についてオックスフォード大学でのワクチン研究を率いるAndrew Pollard氏は、「我々は今、ワクチンが年長者における免疫反応をどの程度誘発させるのかということの評価、そしてより広範な母集団にワクチンが（ウイルスからの）保護を提供することができるのかどうかという試験を開始させる予定だ」と説明する。

その手法としては、被験者に対し今回開発が進む新型コロナウイルスワクチン“ChAdOx1 nCoV-19”と、既に認可が下りているワクチン“MenACWY”を1～2回無作為に投薬し、その効果を比較判断するものとなるという。

チンパンジーの風邪ウイルスから精製、研究は“非常にうまく進展”

しかしオックスフォード大学が研究を進めるこの“ChAdOx1 nCoV-19”とは、一体どのようなワクチンなのだろうか。

研究者らによると、このChAdOx1 nCoV-19ワクチンは、、チンパンジーへの感染を引き起こす一般的な風邪のアデノウイルスを弱めたバージョンである、“ChAdOx1”から作られたものとのこと。

これに新型コロナウイルスの感染経路において重要な役割を果たすという、SARS-CoV-2からのタンパク質を構成する遺伝子を結び付けたとしている。

尚このChAdOx1は遺伝的に変化しているため、人間の体内において複製されることはないという。

これまでのChAdOx1 nCoV-19の研究についてPollard氏は、「臨床研究は非常にうまく進展している」という。

さらにオックスフォード大学における新型コロナウイルスワクチン研究については、英国の製薬企業アストラゼネカ社もChAdOx1 nCoV-19の開発が成功すれば、同社には10億個分の生産を行う能力があり、今年の9月にも供給開始を行うことが出来るとしている。

研究が失敗に終わる可能性も指摘

一方、オックスフォード大学のワクチン研究の成功に対しては疑問の声も上がっている。

というのも新型コロナウイルスは突如として英国内に現れ、急速に広がったものの、その“消失”も非常に早く、新型コロナウイルスに感染しなかった場合にそれがワクチンによるものなのか、あるいはワクチンの被験者となった人が生活するコミュニティ圏内で新型コロナウイルスの流行が収束していたためであるのか判断できないためだ。

これについて自身もオックスフォード大学のワクチン研究に携わるAdrian Hill氏は、研究チームが今年の初頭において9月までに効果的なワクチンを開発できる可能性を80％も有していると発言したことを認めつつ、「しかし現時点では、何の成果も出ない可能性が50％ある」という。

この理由として、「我々は少なくともしばしの間新型コロナウイルスに留まっていて欲しいという、奇妙な立ち位置にいる。しかし症例は減ってきている」と説明。

つまり英国内で新型コロナウイルスへの感染者が減少していることが、ワクチン開発への障壁となっているということのようだ。