行動制限を全面解除する英政府に対し、各国の専門家たちが批判
先日、世界各国の感染症の専門家がネットで集まり、イギリスの新型コロナ対応について議論が交わされた。
7月19日には制限を全面解除
イギリスではワクチン接種が進み、新型コロナによる死者は50人前後となっているが、7月16日には1日の新規感染者が5万人に達した。
またイギリスのボリス・ジョンソン首相は、7月19日からイングランドにおいて、これまでの行動制限を全面的に解除する方針を打ち出していた。
しかし先日、イギリスの科学者が主催したイベントが開かれ、各国の感染症のアドバイザーを務めた科学者などから、全面解除を懸念する意見が相次いだという。
専門家たちの意見とは?
そのオンライン・イベントにはイタリアやイスラエル、南アフリカ、台湾、ニュージーランド、オーストラリアなどの各国政府のアドバイザー(元・及び現職)が参加。
そのうちニュージーランド政府のアドバイザーであるMichael Baker氏は、「科学的な専門知識に関しては、常に英国にリーダーシップを期待してきた。だからこそ、公衆衛生の基本的な原則にさえ従っていないことは驚くべきことである」と発言した。
世界保健機関(WHO)のシニア・アドバイザーであるJosé Martin-Moreno教授は「科学的知識があるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きているのか理解できません」と述べたという。
またニューヨークにあるシンクタンク「Access Health International」のWilliam Haseltine博士も、世界の他の国が政治目的のためにイギリスに追随することを恐れているとした上で、「私たちと同じようにワクチンを接種している人口の中で、非常に急速に感染者が増加しているのを見て、私は非常に狼狽しています」と発言。
さらに「カレッジ・ロンドン」の臨床業務研究部門の責任者であるChristina Pagel教授も次のように述べている。
「世界的な旅行の拠点となっていることから、イギリスで優勢な変異株が発生した場合、すぐに広まるでしょう。イギリスの政策は私たちだけに影響するものではありません。イギリスの政策は、私たちだけでなく、すべての人に影響を与え、すべての人が私たちの活動に関わっているのです」
8月には1日に10万人が感染か
実は先日、専門誌「ランセット」に投稿された論文においても、科学者たちは、イギリス政府の計画を批判。行動制限の全面的解除が「非常に危険であり、非倫理的な実験である」と述べていたという。
また8月には1日に10万人の感染者が出ると予想しており、現在ワクチンによって死者数は抑えられているが、試算では1日に200人の死者が出ることが示されたそうだ。
さらにイギリス政府の感染症対策の医療責任者・イングランド主任医務官のChris Whitty教授も、ここ最近は新型コロナによる入院も3週ごとに2倍になっていると警告している。
実はボリス・ジョンソン首相も以前から、パンデミックがさらに拡大した場合には、イングランドに行動制限が再び導入される可能性があると述べていた。
またこのように感染者が急増している時に、全面解除するのは「ギャンブルのようなものだ」と認めていたという。
このため全面解除になっても政府は、交通機関などの公共の空間ではマスクの着用を推奨し、できるだけ屋外で人と会うことなどを薦めているという。(了)
出典元:METRO:Scientists fear England’s Covid unlocking next week is a threat to the world(7/16)