97歳の大富豪がごり押し? 大型学生寮の無茶なデザインにプロ建築家がブチギレ
「天国に一番近いキャンパス」とも呼ばれるカリフォルニア大学サンタバーバラ校。キャンパス内に建設予定の学生寮が、大きな注目を集めている。
4500人が入居可能
地価の高騰が続くカリフォルニア州内で、メインキャンパスのほど近くという、学生にとっては非常に便利な立地に建設予定だ。11階建ての建物には4500人が入居可能だという。
恵まれた立地条件でありながら、格安の寮費を目指しており、学生にとってはありがたい存在になりそうだ。
居住フロアの詳細
寮は11階建ての建物のうち、居住スペースは9階分。各フロアに8つのハウスがあり、ハウスには8つのユニットが入る。各ユニットには8つのベッドルームがあるという建物だ。
この説明ではいまいちピンとこないと思うので、詳細を見てみよう。
▼ベッドルーム
ベッドとデスク、最小限の収納にとどまっている。
▼ユニット全体像
8つのベッドルームで構成されるユニットには、中央に共有スペースがある。ユニットごとにキッチンと洗面所、トイレ、シャワー室がある。
▼各フロアの全体像
8つユニットで構成されているハウスには、ランドリースペースやキッチン、トイレ、シャワー室、娯楽室などがある。
キャンパス内で生活が完結
1階部分と11階部分には、お店やフィットネスジム、レクリエーションルーム、太陽が注ぐ庭園エリア、多目的ホールなどが入る予定だ。
▼レクリエーションルーム
▼11階の庭園エリア
寮の中で生活が完結する、充実した設備だと言えるだろう。学生同士の交流を深めたいというのも、この寮の目的だという。
大富豪がアマチュア建築家に?
個室は狭いものの、その他の設備が充実したこの寮は、とある富豪の寄付によって建設されている。その富豪とは、投資家のチャーリー・マンガー氏。投資持株会社バークシャー・ハサウェイの副会長を務めている人物だ。この寮のために、実に2億ドル(約230億円)を寄付。彼の名前を取って、寮はマンガー・ホールと名付けられた。
寄付の条件は彼のデザイン通りの寮を建築すること。つまり、上記で説明した寮には、マンガー氏の理想が詰まっているというわけだ。このことから、英紙「Independent」は「97歳のビリオネア投資家が、アマチュア建築家に転身した」と揶揄している。
「窓がない」で炎上中
10月25日、建築家のデニス・マクファデン氏が大学の建築コンサルタントの職を辞任する騒ぎとなり、この学生寮の問題が炎上している。
彼は過去15年間にわたり、同大学の建築デザインレビュー委員会に在籍。「94%の個室に窓がない」というマンガー・ホールの窓の少なさを問題視していたが、10月5日に委員会で取り上げられた際には、すでにデザインは確定しており、委員会は承認も投票も求められない状態だったという。
大学は11月4日に公開したQ&Aで、ハウスの共有部分は窓に接していることを強調している。また、感染症対策として気になる換気についても、通気口を各部屋に取り付けることで建築基準の2倍の換気を実現するという。
また、出入り口の少なさも問題となっている。現時点で4000人が入居し、全米最大の寮である米国海軍兵学校の宿舎には、25カ所の出入り口がある。対してマンガー・ホールは2カ所しかない。
安価で利用でき、生活がキャンパス内で完結できるマンガー・ホールは魅力的かもしれない。しかし、火事などの災害が起こった時のことを考えると、出入り口の少なさには不安が残る。
窓がなくて出入り口が少ないが、安くて魅力的な設備の整ったマンガー・ホール。皆さんは入居したいと思うだろうか。
《参考元一覧》
カリフォルニア大学サンタバーバラ校
「Absolutely Stunning」(7/27)
「Design Review Committee Reviews Details on Munger Hall」(10/18)
「Munger Hall Q&A」(11/4)
Independent:「Dormzilla Descends on UCSB」(7/14)
Independent:「Architect Resigns in Protest over UCSB Mega-Dorm」(10/28)