モスクワのコンサートでウクライナの曲、警官の制止を無視して弾き切ったピアニストに拍手喝采
同じような場面が、名作映画の中にもあったような気がする。
ウクライナの作曲家の作品をメインにした小コンサートが、先日、ロシア・モスクワで開かれた。そこに警官が立ち入り、演奏を止めようとしたが、ピアニストは無視して弾き続け、聴衆から喝采を浴びた。その様子を映した動画が、SNSや海外メディアで拡散されている。
演奏中に2人の警官が
ロシアの独立系ニュースチャンネル「Meduza」によれば、そのコンサートはロシアのクラシックピアニスト、アレクセイ・リュビモフさんと、歌手のイヤナ・イヴァニロヴァさんが開いたもの。曲目はウクライナの現代作曲家、ヴァレンティン・シルヴェストロフ氏の作品がメインだったそう。詳細は不明だが、反戦を訴える小規模なコンサートだったようだ。
コンサートの前半は、イヴァニロヴァさんがウクライナ作品の歌曲を歌い、後半はリュビモフさんのピアノ演奏だったらしい。警官が踏み込んで来たのは、リュビモフさんがシューベルトの即興曲 op90 No.2 を弾いている最中だった。(ウクライナ作品がメインのプログラムだったが、この時はシューベルトだった)
下にあるのが、ニュースチャンネル「Meduza」がTelegram(メッセージアプリ)に投稿し、ツイッターで拡散されている動画だ。
Police raid an antiwar concert at a Moscow cultural center, disrupting a performance by pianist Alexei Lubimov. But he still managed to finish his last tune. https://t.co/Z5mRL7ZgnP pic.twitter.com/8x9Uhg9PEe
— Kevin Rothrock (@KevinRothrock) April 13, 2022
この動画では、2人の警官が聴衆の前に立ちはだかっているだけに見えるが、実はその前にいろいろある。大声を上げて威圧的な態度で会場に入って来る警官、演奏中のピアニストに話しかけて止めさせようとする様子……別の人が撮影した生々しい動画がYouTubeにアップされている。(曲の始めから撮影されたもの。見所は警官が入って来る4:55あたりから)
モスクワ生まれのピアニスト
動画を見ると、弾き終えた瞬間にピアニストが力強く拳を振り上げているのが分かる。海外メディアによれば、彼は70代後半。モスクワ音楽院で伝説的なピアニストであるゲンリフ・ネイガウスに師事し、「全ロシア若手ピアニストコンクール」で優勝。シェーンベルクやリゲティなど現代音楽作品の、ソ連初演を行った人だとWikipediaにある。
おそらく、芸術を愛する彼の気持ちは、警察の制止などに動じなかったのだろう。
残念ながら、この後の演奏は中止になったと報じられている。ウクライナの曲を演奏したからでなく、会場ビルに爆弾が仕掛けられているという通報があったためだ、と警察は言っているそう。(了)
出典元:UNILAD:Pianist Defiantly Plays Ukrainian Music At Moscow Concert Before Police Storm The Stage(4/14)
出典元:Metro:Pianist defies police ordering him to stop playing Ukrainian music in Moscow(4/14)
出典元:YouTube:Today in Moscow: the police interrupted the concert of pianist Alexei Lubimov(4/15)