イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカのトランプ大統領が提案した「20項目の和平計画」に合意したが、その数時間後、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退を否定した。

 

トランプ氏の計画に重要な修正を加える

 

トランプ大統領は9月29日、ホワイトハウスでネタニヤフ首相と会談。その後、共同記者会見でネタニヤフ首相は、ガザ紛争終結に向けたトランプ氏の「20項目の和平計画」を「支持する」と表明した。

 

トランプ氏はその後、ガザ地区を統治する「ハマス」に最大4日間の回答期間を与えるとし、現在「ハマス」の交渉団は、この「計画」を検討しているという。

 

ドーハへの攻撃に関して、ネタニヤフ首相からの謝罪を受け取ったカタール政府は、再び仲介役を引き受けており、カタールのアル・サーニー首相は「ハマスは責任ある行動を取り、計画を検討すると約束した」と述べた。

 

また、アル・サーニー首相は、トランプ大統領のガザ和平案にはいくつかの点について明確化と交渉が必要だと述べつつも、全ての関係者が「和平案を建設的に捉え、戦争終結の機会を捉えることを期待する」と述べたという。

 

「20項目の和平計画」には、イスラエル軍のガザ地区からの撤退や、ガザ地区を併合しないことが含まれていたが、イスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ氏との会談から数時間後、ガザ地区からの軍の完全撤退を拒否。「X」への投稿で、次のように述べた。

 

「イスラエル軍をガザから撤退させるつもりはない。とんでもない、そんなことはあり得ない」

 

またネタニヤフ首相は、「ハマスに対し、人質を解放させるというイスラエルの条件を受け入れるよう圧力をかけることで、形勢を逆転させた」と主張した。

 

しかも「タイムズ・オブ・イスラエル」紙によると、ネタニヤフ首相はトランプ大統領の計画に重要な修正を加え、イスラエル軍がガザ地区の大部分を支配し続けられるよう、撤退を遅らせ、制限したという。

 

曖昧な条項が数多く含まれている

 

トランプ氏の「20項目の和平計画」には、パレスチナとこの地域の将来を決定づける、曖昧な条項が数多く含まれていると言われている。

 

カタールのアル・サーニー首相も、トランプ氏の停戦案は「戦争終結という第一目標を達成するもの」と指摘しながらも、提案されたのは「原則」のリストであり、「詳細は議論する必要がある」と述べている。

 

その未解決となっている詳細とは、誰がガザ地区を統治するのか、パレスチナ自治政府はどのような役割を果たすのか、国際安定化軍はどのように構成され、誰に権限が与えられるのか、イスラエル軍はいつ撤退するのか、そしてこれらの措置がパレスチナ国家樹立への道を開くことになるのか、といった点になるという。

 

イギリスを拠点にする団体「パレスチナ人のための国際正義センター（ICJP）」は、この計画が新植民地主義的であり、パレスチナ人の声を欠いていると非難。またイスラエルの戦争犯罪に対する説明責任も曖昧にし、ネタニヤフ首相に和平を遅らせたり、頓挫させたりする手段を与える危険性があると指摘した。

 

さらにネタニヤフ首相が記者会見で、「パレスチナの国家を承認しない」と発言したことにも言及し、「この計画は、イスラエルに、一時停止、再武装、そして再び罰せられることなく暴力を再開する機会を与えるだけだ」と述べたという。

 

59人のパレスチナ人が死亡

 

一方、ガザ地区では9月30日も、イスラエル軍の攻撃が続けられ、中部のDeir el-Balahでは、無人機による攻撃があり、少なくとも6人が死亡した。

 

アル・アクサ病院の関係者によれば、犠牲者の中には1人の子供とジャーナリスト1人が含まれているという。

 

またガザ地区中部のヌセイラトにある難民キャンプ周辺でも、イスラエル軍の空爆が行われ、少なくとも4人が死亡、数人が負傷した。

 

同じくヌセイラトにある配給所付近でも、支援物資を求めていた18人がイスラエル兵などに殺されたと報じられている。

 

ガザ地区の医療関係者によれば、9月30日の夜明け以降、ガザ地区全域でイスラエル軍の攻撃により、少なくとも59人のパレスチナ人が死亡したという。

 

さらにイスラエル軍は、ヨルダン川西岸地区でも数多くのパレスチナ人を拘束し始めており、9月29日には、南部のヘブロンで5歳と6歳のパレスチナ人の児童も拘束され、国連人権高等弁務官事務所が非難している。（了）

 

出典元：Aljazeera：LIVE: Israel kills 59 people in Gaza; Hamas reviews Trump’s plan to end war(9/30)