「進化は直線的ではなかった」甲羅のないカメの化石が、新たな可能性を示す
カメの特徴といえば甲羅や歯のないくちばしなどが挙げられるが、新しく発見された古代のカメの化石によって、どのように現代の特徴を備えるに至ったのかについての研究論文が「Nature」で発表された。
長い尾を持ち、甲羅がないカメ
そのカメとは「Eorhynchochelys sinensis」。論文の主筆である中国科学院、古脊椎動物古人類学研究所のLi Chun氏によって発見され、「最初にくちばしを持ったカメ」という意味の名前が付けられている。
「Eorhynchochelys」は今から約2億2800万年前に生息していたとみられ、体はフリスビーのような円盤型をしており、現代のカメのような甲羅が形成されていなかったという。
論文の著者の1人でシカゴにある「Field博物館」の古生物学者であるOlivier Rieppel氏は、次のように述べている。
「この生物の長さは6フィート(約182cm)以上で、奇妙な円盤のような形をしています。そして長い尾を持ち、顎の前部が発達して、奇妙なくちばしを形作っています。このカメは恐らく浅瀬に住み、食べ物を得るために泥を掘っていたのでしょう」
進化の過程や、どの爬虫類に属するかが不明
「Eorhynchochelys」はこれまで研究者らが発見してきた唯一の初期のカメではなく、他にも部分的に甲羅があるがくちばしがないといった、初期の種類も発見されているという。
また今までは、カメがどのような爬虫類の系図に含まれるのかも明らかになっていなかったそうだ。
Rieppel氏も「カメの起源については何十年もの間、古生物学の世界では解決できていない問題なのです。(しかし)今やEorhynchochelysによって、カメがどのように進化したのか、より多く明らかになったのです」と語っている。
「進化は直線的ではなかった」
研究者らによれば「Eorhynchochelys」が、他の初期の種類よりも早くくちばしを発達させ、しかし甲羅はないという事実は、「モザイク進化」の証拠になるという。
「モザイク進化」とは、それぞれの特性が異なった割合で独立して進化することで、全ての祖先が同じ特徴の組み合わせを備えているとは限らないことを示すものだとか。
つまり現代のカメは甲羅とくちばしの両方を備えているが、そこに至るまでの進化の過程は直線的ではなく、ある種が部分的に甲羅を持ったり、他はくちばしを持たなかったりと、これらの特徴を作る遺伝変異が同じ動物の中で起きることを表しているそうだ。
著者の1人である、スコットランド国立博物館のNick Fraser氏は、次のように述べている。
「この印象深い大きな化石はカメの進化の謎に関して、パズルのピースを与えてくれる非常にエキサイティングな発見なのです。それは初期のカメの進化が、まっすぐではなかったことを示しています。徐々に個性的な特徴を蓄え、より複雑で多くの一連の出来事があったのです。私たちはただ、それを解き明かし始めているに過ぎないのです」
カメが属する爬虫類のグループも判明
また「Eorhynchochelys」の頭蓋骨の化石はより詳細な情報を伝えており、残されたもう1つの進化に関するミステリーを解決したという。
そもそも数年間、科学者たちはカメの先祖が、現代のトカゲやヘビと同じ「双弓類(diapsids)」という爬虫類のグループの1部だったのか確証が得られていなかったそうだ。
そして「双弓類」というグループは進化の初期に、頭蓋骨の両サイドに2つの穴があったが、もう1つのグループ「無弓類」には、その穴がなかったとされている。
そして「Eorhynchochelys」の頭蓋骨の両側には穴が2つあり、「双弓類」に属することが明らかになったという。Rieppel氏は次のように述べている。
「Eorhynchochelysの双弓的特徴を持った頭蓋骨により、私たちはカメが初期の無弓類の爬虫類ではなく、より進化した双弓類の爬虫類に関係していることを知りました。これで決着がつきました、論争は終わったのです」
今回の発見は、動物が進化で枝分かれしていくことを科学者がどのように考えるかについて、変化をもたらすことになると言われている。(了)
出典元:Field Museum:228-million-year-old fossil turtle didn’t have a shell yet, but had the first toothless turtle beak