月は一つだけじゃない?地球の周囲に“ゴースト・ムーン”があるのを発見
月といえば夜空に輝き、うさぎが餅つきをしているかのような影が見えるものを思い浮かべるのが普通だろう。
ところがこのほど、地球の周囲に月のようなものが他にも存在していることが発見され、注目されている。
2つの“ゴースト・ムーン”
今回月のようなものを発見したのは、ハンガリーの首都ブダペストに位置するエトヴェシュ・ロラーンド大学の天文学者である、Gabor Horvath氏と Judit Sliz-Balogh氏の二人。
二人によると今回発見されたものは2つの塵の一群で、地球の周りを旋回。
月からもそう遠くない地点に位置しており、“ゴースト・ムーン”などと呼ばれている。
以前から指摘されていた
一方、この“ゴースト・ムーン”の存在はかつてから指摘されていた。
最初にこの存在がポーランド人天文学者Kazimierz Kordylewski氏によって指摘されたのは、約60年も前のこと。
これらはぼんやりとした塵の一群のようなものとして認識され、また直径は数万マイルほどに及ぶものの、肉眼で見るには非常にかすかなもの。
さらにKordylewski氏が発見した光が非常に不明瞭であったため、その存在を他の科学者らに納得させるまでには及ばず、それらは“Kordylewskiの塵”などと呼ばれ長らく議論されてきた。
60年もの時を経て存在を確認
一方、今回の発見においてはハンガリー西部に位置する私的な観測所において、この存在を示すはっきりとした証拠が確認されたという。
また月刊の天文学誌である「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」においては、これを撮影した際の写真も掲載されている。
写真上で確認するのは非常にわかりにくいため白い丸が示されているが、この地点に“ゴースト・ムーン”は存在するという。
“ゴースト・ムーン”の実態とは?
しかし気になるのは“ゴースト・ムーン”とは実際にどのようなものであるのか、ということではないだろうか。
“ゴースト・ムーン”は月とほぼ同様に、地球から約40万キロ離れた地点を軌道とする。
また“ゴースト・ムーン”のうち一つは月の手前を軌道としており、もう一つは地球の重力の影響が月の重力によって相殺される地点を軌道としているとのことだ。
ちなみにこのような天体の重力均衡が釣り合う地点は“ラグランジュ点”と呼ばれ、塵や気体を集め、何十年にもわたりそれを維持することができるのだという。
天文学者のPhillip Plait氏は、これについて“地球のように大きく、月のような小さな天体が周囲を軌道としている天体においては、遠心力と重力が釣り合う空間が存在する”、“より小さな物体をそこに置くと、それは長い間にわたりそこに留まり続ける”と解説している。
一方、このような地点において収集された塵が、どれほど長期にわたり存在することができるのかという点はわかっていない。.
“ゴースト・ムーン”に関しては、少なくともKordylewski氏が最初にその存在を指摘した1961年以降存在し続けていたとみられているが、今後数年のうちに消滅してしまう可能性も考えられるという。
今回その存在が証明された“ゴースト・ムーン”。数十年にもわたる論争にようやく決着が付いたのに、今後数年で消えてしまっては、なんだか残念な気がしてならない。(了)
出典:NBCNews.com:‘Ghost moons’ discovered in orbit around Earth(11/2)