デンマークでの社会実験の犠牲者、グリーンランドの先住民が補償を求める
1951年に行われた社会実験で、グリーンランドの先住民6人が、デンマーク政府に補償を求めている。
「架け橋」にさせるための社会実験
そもそもグリーンランドは、デンマーク王国内の自治領であり、通貨の管理、外交、防衛などをデンマークに依存していたという。
そして1951年、デンマーク政府は、グリーンランドの近代化のために、新しい人材が必要だと考え、ある社会実験を行ったそうだ。
それはグリーンランドの先住民(イヌイット)の子供たちに、デンマーク本土で再教育を受けさせ、「より良い生活」を送らせ、帰国してグリーンランドとデンマークの架け橋にさせるというもの。
そこでグリーンランドの教師や司祭らは、そのような子供たちを探すことに。もっとも多くの親が子供たちをデンマークへ送り出すことを嫌がったが、それでも諦めざるを得ない家族もいたという。
こうして選ばれた先住民の子供たち22人は、1951年5月に「MSディスコ号」と呼ばれる船に乗り、デンマークへ送られた。
親族との接触の機会を奪われる
しかしデンマークに到着後、子供たちは親族との接触の機会を奪われ、デンマーク語やグリーランド語を話すのが困難だったため、児童福祉施設に預けられることに。
ただ結局、この社会実験は失敗し、その後グリーンランドに戻された子供たちは、孤児院に入れられ、やはり家族と再会することはなかったという。
そして現在、70代になった彼らのうち6人が、デンマーク政府に3万7800ドル(約430万円)の補償を求めている。
「デンマークは楽園のような場所」
デンマーク当局はこの件で声明を出してはいないが、昨年デンマークのMette Frederiksen首相は、この問題について正式に謝罪している。
当時7歳の子供だったHelene Thiesenさんは、2015年のBBCのインタビューにおいて、母親から「デンマークは楽園のような場所だから、悲しまなくていいのよ」と言われたことを告白している。
そして1996年、Thiesenさんは52歳の時に初めて自分がデンマークへ連れて行かれた理由を知り、その後も母親との関係を修復することはできなかったという。(了)
出典元:BBC:Greenland’s Inuit seek Denmark compensation over failed social experiment(11/23)