駐豪ウクライナ大使、両軍の兵士が抱き合う壁画を批判、撤去を要求
オーストラリアの町で、ある壁画が描かれ、ウクライナの大使が批判している。
ウクライナ兵とロシア兵が抱き合う
その壁画が出現したのは、ビクトリア州の州都・メルボルンだ。
その絵には、ウクライナ兵とロシア兵とみられる人物が、抱き合っている様子が描かれていた。
オーストラリアに駐在しているウクライナ大使のVasyl Myroshnychenko氏は、この絵が「全てのウクライナ人にとって全く不快」であり、作者は「ロシアのウクライナ侵攻について何の手がかりも持っていない」と述べた。
その上でツイッターにおいて「この壁画は、被害者と加害者の間に同等性(等価性)があるという、誤った感覚を生じさせる。速やかに撤去されなければならない」と投稿したという。
1/ A recently unveiled mural in @Melbourne showing a RU and a UA soldier hugging is utterly offensive to all Ukrainians. The painter has no clue about the RU invasion of Ukraine and it is disappointing to see it done without consulting the Ukrainian community in Melbourne. pic.twitter.com/TCG6s7W9SJ
— Vasyl Myroshnychenko (@AmbVasyl) September 3, 2022
被害者と加害者を対等に描くのは危険
シドニー大学でデジタル文化の講師を務める社会学者、オルガ・ボイチャック氏は、こうした同等性が危険な理由は「両者が武器を置くことに合意すれば、平和が実現すると暗示するからだ」と指摘している。
またボイチャック氏は「今までに、ウクライナが戦闘をやめたらどうなるか、は誰もが知っている。だから、この『アート』は抵抗の生きた経験を委縮させる」とツイートした。
さらに、ロシアで描かれた絵にも同様の比喩的な表現が見られ、それらが被害者と加害者を対等な立場で描いていると指摘。
その上で作品を描いた人物に対して「もしあなたが平和のビジョンに貢献することに興味があるアーティストなら、ウクライナのポストコロニアル(植民地後)の歴史を読み解くことは素晴らしいスタート地点になるでしょう」と述べている。
作品の意図は「平和を促進すること」
一方、この絵を描いたアーティストのピーター・シートンさんは9月4日、この作品について謝罪。彼は、一部の批評家がほのめかしたように、自分はロシアの組織とは何の関係もないと主張した。
さらに絵の意図にについて「平和を促進すること」だとし、次のように述べたという。
「私は純粋に、人々の一体感や、私たちは皆一つであるという、精神的な考えを持った人間です。(略)私は、自分たちには根本的に、共通点がないことよりも共通点が多いという、その理想から動かずに墓の上で死んでいくでしょう」
シートン氏は、作品の写真をNFTとして販売し、利益は戦争廃止団体であるWorld Beyond Warに寄付されると述べていたという。(了)
出典元:The Guardian:Ukraine’s ambassador to Australia calls for removal of ‘offensive’ mural of Russian and Ukrainian soldiers(9/4)