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遺伝的に異なった幹細胞を注入し、緑色の瞳や黄色の指をしたサルを作り出す

遺伝的に異なった幹細胞を注入し、緑色の瞳や黄色の指をしたサルを作り出す
Cell_Cao et al.

中国の科学者たちは、緑色に輝く目と黄色く光る指先を持つ、他に類を見ない霊長類を作り出した。

 

遺伝的に異なる幹細胞を、サルの胚に注入

 

中国の研究チームは、同じ種類のサルから採取した、遺伝的に異なる2つの受精卵の多能性幹細胞を用いて、1匹の尾長ザル(Macaca fascicularis)の子供を作り出したという。

 

まず、あらゆる細胞に分化可能な多能性幹細胞を、生後1週間のサルの胚に注入する際、提供された幹細胞に緑色の蛍光タンパク質のラベルを付けるようにした。

 

こうすることで、緑色に光っている組織や細胞があれば、それがドナーから提供された幹細胞であることが分かる。

 

そして操作された胚を雌のサルに移植したところ、6匹しか生着せず、そのうちの1匹(雄)だけが誕生し、体の複数の部位に幹細胞由来の組織を示し、緑色に輝く目と黄色く光る指先が確認されたという。

 

しかし、このサルのキメラは、低体温と呼吸困難のため、生後わずか10日で安楽死させなければならなかったそうだ。

 

ドナー細胞の割合が高い「キメラ」

 

科学の世界では、動物の「キメラ」とは、2匹以上の親に由来する細胞で構成された生物のこととされている。

 

ただ複数の受精卵の融合から、人工的に作られたサルは、これが初めてではない。

 

2012年には、初めてキメラ・サルの誕生が報告されたが、この生物のドナー細胞が組織や細胞に占めた割合は非常に低く、わずか4%程度( 0.1~4.5%)にとどまったという。

 

しかし今回のサルは、ドナーの幹細胞に由来する細胞が占める割合が高く、低いものでも21%、高いものでは92%もあったそうだ。

 

しかも今回のサルの体内では、脳、心臓、腎臓、肝臓、消化管、精巣、そして精子などにおいて、ドナー(提供する側)胚とホスト(提供される側)胚の、2つの異なる幹細胞から作られた細胞や組織が見られたという

 

つまり、このサルは、ドナーの幹細胞に由来する細胞の割合が高い、世界で初めてのキメラ霊長類と考えられている。

 

この研究論文の共著者で、広州にある中国科学院大学の幹細胞生物学者、ミゲル・エステバン氏は、次のように述べている。

 

「今回の発見は、人間の病気や治療を確立する上で、キメラのマウスなどより、生物学的にも人間に近いサルを使う扉を開いたのです」(了)

 

出典元:Nature Jounal:This hybrid baby monkey is made of cells from two embryos(11/9)

出典元:Science Alert:Glowing Fingertips And Green Eyes: First-of-Its-Kind Monkey Chimera Born in China(11/10)

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