数千人の新生児が盗まれた事件、スペインで医者に対する裁判が行われる


スペインで以前、多くの生まれたばかりの赤ちゃんが母親から強制的に引き離され、その後養子に出されたり、売られたりした事件をご存知だろうか。

 

これは「盗まれた子供たち」事件と呼ばれてきたが、6月26日にこのケースに関する裁判が首都マドリードで行われた。

 

他のケースでも裁判を始めるよう要求

 

この事件で法定に立たされたのは、高齢の婦人科医であるEduardo Vela被告(85)。同被告は1969年、San Ramon病院に勤務していた当時、赤ちゃんを誘拐し、他の女性に与えた容疑で訴えられたという。

 

検察官はVela被告に対し、書類の偽造及び7歳未満の子供の誘拐、違法監禁、違法な養子縁組、さらに存在しない出産を証明した罪などで11年を求刑したが、本人は容疑を否認したそうだ。

 

一方、訴えを起こしたInes Madrigalさん(49)は、Vela被告が養母を生物学上(実)の母親として示すため、自分の1969年の出生証明書を書き換えたと主張している。

 

また裁判所の前ではデモも開かれ、参加者が「正義」というスローガンが書かれた黄色いTシャツを着て、まだ行われていない一連の事件に関する他の裁判の開始を求めたそうだ。

 

政権と繋がりのある家族に子供を渡す

 

この「盗まれた子供たち」事件は、主にフランシス・フランコ独裁政権が続いていた1939年から1975年頃にかけて(その後も80年代まで続く)、政権側の人間によって行われたとされている。

 

活動家らによれば当時、当局が共産主義者や左派と呼ばれる「問題がある親」から赤ん坊を取り上げ、フランコ政権と繋がりのある家族に与えていたという。

 

しかも当初は「道徳教育上」問題がある家庭から子どもを引き離すことを目的に、この政策が進められてきたが、やがて金銭目的に変化。母親たちは病院から、新生児が既に死亡し埋葬されたと説明を受けてきたが、実際は譲られたり、売られたりしていたとか。

 

以前、判事を務めたBaltasar Garzon氏は、フランコ政権下において生まれてすぐに連れて行かれた子供、約3万人についての事件記録を残したそうだ。

 

アルゼンチンでも同様の事件があった

 

実は似たような事件は1976年から1983年にかけて、アルゼンチンのやはり軍事独裁政権下でも起きていたという。

 

その後、アルゼンチンの裁判所は、政治犯から組織的に赤ん坊を盗んだとして、容疑者らに長期の刑を言い渡したそうだ。

 

しかしスペインでは、いまだ数百件に関する事件について、裁判すら始まっていない。その理由としては、証拠が不足している点、さらに時効が成立しているケースがあるからと考えられている。

 

独裁政権下で赤ん坊を奪われた母親は、どんな思いで暮らしてきたのか。それを思うと改めて国家権力の恐ろしさを感じざるを得ない。(了)

 

出典元:euronews:Doctor stands trial over Spain’s “stolen babies” scandal(6/26)

出典元:The guardian:Spanish doctor stands trial over Franco-era ‘stolen babies’(6/26)

参考:AFP:フランコ政権下の「盗まれた子供たち」事件、初の裁判 スペイン(2012/4/15)