「吸血鬼」とされた16世紀の女性、頭蓋骨から顔を復元
16世紀に「吸血鬼」とみなされていた女性の頭蓋骨から、顔が復元された。
死亡したペスト患者を埋葬
その女性の遺体は2006年、イタリア・ベネチア沖にあるラザレット・ヌオーヴォ島の埋葬地で、発掘中に発見されたという。
その島は当時、ペスト患者の療養所として使用されており、1576年にペストが流行した時、死亡した多くの患者が埋葬されたそうだ。
しかし発見された遺体の女性の口には、レンガが挟まっており、このことから当時の人間が、この女性を「吸血鬼」とみなしていた可能性が浮上していた。
そして今回、3Dデザイナーで法医学専門家のシセロ・モラエス氏により、女性の顔が復元された。
現代人の顔を参考に肉付け
モラエス氏は、まず頭蓋骨を投影し、測定しながら、正面図と側面図をスケッチ。同様に歯列弓(歯並びを上から見たときのアーチ)も描いたという。
その上で、頭蓋骨の輪郭に合わせるために、現代人のCTスキャンされた顔を変形させ、古代人の頭蓋骨に肉付けをしていったそうだ。
またモラエス氏は、発泡スチロールでレンガのレプリカを作成。女性の死後、そのレンガが意図的に彼女の口に挿入された可能性があるかどうかを判断する、一連の実験を行った。
その結果、歯や軟組織を損傷することなく、レンガが口腔内に挿入された可能性が示されたが、意図的に口に入れられたのか、については不明なままとなっている。
遺体の血を飲んでいると推測
ペストが流行した時期、村の人々は致命的な病気に対するスケープゴートを探し始め、吸血鬼に対する恐怖が生まれたという。
また吸血鬼に関する考えは、病気の蔓延により集団埋葬を再開すると同時に、凄惨な腐乱死体と定期的に接触していた、イタリアの墓掘り人によって広まったと考えられている。
これらの腐った遺体は、口や鼻から体液がにじみ出て、ひどく膨れ上がっているように見えることが多く、他の遺体の血を飲んでいるのではないかと考えられたそうだ。
2010年に女性の遺体を分析した研究者らは、墓掘り人らにより、レンガが意図的に女性の口の中に入れられたと結論づけたという。
つまり、このレンガは、死んだ女性がこれ以上他の死体の血を吸うことなく、疫病を広めるのを防ぐために口に詰められたと考えられている。(了)
出典元:IFLScience:This May Be The Face Of A “Vampire” From 16th-Century Italy(3/22)