宇宙で過ごすと、人間の体はどう変化するのか?

3月18日、国際宇宙ステーション(ISS)に取り残されていた2人の宇宙飛行士が地球へ帰還したが、そもそも宇宙空間で過ごすと、人間の体はどうなるのだろうか?
「心臓や筋肉、骨も楽になる」
BBCによれば、人間は地球の重力下で機能するように進化したため、宇宙に入ると、体が変化し、最初は素晴らしい気分になるという。
2015年にISSに滞在したイギリス人宇宙飛行士のティム・ピーク氏も、「まるで休暇のような気分です。心臓が楽になります。筋肉と骨も楽になります」と語っている。
宇宙ステーションでは、人は無重力(微小重力)環境の中を漂うことになるが、これはちょうど、何週間もベッドでくつろぎ、起き上がる必要のない状態と似ているという。
宇宙空間では「老化が加速」
しかし、筋肉に関しては、使わなければ衰えていく。実は地球上では、ただじっと立っているという単純な動作でさえ、体全体の筋肉を使って体をまっすぐに保っているという。
ところがISSの微小重力では、筋肉を使うことがない。
また心臓と血管も、重力に逆らって血液を送り出す必要がなくなるため楽になるが、同時に弱まっていくそうだ。骨も同じで、次第に弱くなり、脆くなっていく。
古い骨を分解する細胞と、新しい骨を作る細胞の間にはバランスがあるはずだが、重力に逆らう暮らしにより、バランスが崩れていくという。
サウスウェールズ大学のダミアン・ベイリー教授も、「毎月、骨と筋肉の約1%が衰えていきます。これは老化の加速です」と語っている。
そのため宇宙飛行士たちは、宇宙ステーションで毎日、ランニングマシーンやサイクリングマシーン、ウェイトトレーニングを組み合わせた2時間の運動を行っているという。
それでも地球帰還後に、骨の量が回復するには数年かかる場合があり、骨の種類にも微妙な変化が起きるため、完全には正常に戻らない可能性もあるそうだ。
今日からAREDでの筋トレがスタート。
基本全身リラックス状態が続く無重力環境では、筋力低下や骨密度低下を防ぐために運動が欠かせません。
動画観ていただくとわかるように、ISSに運動の振動が伝わらないような仕組みが施されているのですが、慣れない初日の今日は完全にこれで酔いました( ;゚;ж;゚) pic.twitter.com/GogEGzE4Da— 大西卓哉 (JAXA宇宙飛行士)Takuya Onishi (@Astro_Onishi) March 19, 2025
体全体が変化する
他にも宇宙空間では、体全体が変化すると言われ、体内に生息する善玉菌の種類、つまりマイクロバイオームや、体内の体液も変化するという。
体液は地球上では、足に向かって降りていくが、宇宙空間では胸や顔に向かって上昇するそうだ。これにより最初に、顔がむくむなどの変化が現れる。
またこれらの現象は、脳の腫れや、視神経、網膜、さらには目の変化にもつながる場合があり、「宇宙飛行関連神経眼症候群」として、視力低下や回復不能な損傷に至る可能性もあるという。
さらに宇宙には上も下も横もないため、方向を感知する前庭系が歪められ、地球帰還後には目眩を感じるそうだ。
ティム・ピーク氏も「目眩が治まり、バランスを取り戻し、普通に歩けるようになるまで2~3日かかりますが、地球に戻ってからの2~3日は本当に辛いです」と述べている。(了)
出典元:BBC:What nine months in space does to the human body(3/19)