Switch news

知っておきたい世界のニュース

プラスチックに含まれる化学物質が、睡眠障害などを引き起こす可能性

プラスチックに含まれる化学物質が、睡眠障害などを引き起こす可能性
flickr_TNS Sofres

人間の細胞を使い、プラスチックに含まれる化学物質の影響を調べる研究が行われ、体内時計を乱す可能性が示された。

 

体内時計を17分狂わせる可能性

 

この研究では、ポリ塩化ビニールでできた医療用チューブや、長距離ランナーが水分補給で使用するポリウレタン製の容器(袋)から抽出された、化学物質の影響が調べられたという。

 

ノルウェー科学技術研究所などの科学者たちは、実験室でヒトの細胞を使い、試験管内で化学物質によるアデノシン受容体への影響を調べたそうだ。アデノシン受容体とは脳内にあり、概日リズム(circadian rhythm:24時間周期で変動する生理現象、体内時計)を調節する信号の伝達に関与している。

 

実験の結果、プラスチックに含まれる化学物質が、体内時計を調節する細胞への信号に悪影響を及ぼし、最大17分も狂わせる可能性が初めて示されたそうだ。

 

そしてこのことは、コーヒーに含まれるカフェインと同様に、体内の自然な24時間睡眠・覚醒サイクルと概日リズムを乱し、睡眠障害、糖尿病、免疫疾患、がんのリスクを高める可能性があるという。

 

化学物質の細胞への影響を調査

 

ポリ塩化ビニールとポリウレタンは、子供のおもちゃから食品包装、家具まで、あらゆるものに使用されており、また概日リズムは、昼と夜に応じて覚醒度と疲労度を調節する分子時計とされている。

 

また概日リズムの変化は、肥満、認知症、心血管疾患などのリスク増加と関連しているとも言われている。

 

たいていプラスチックの研究については、化学物質が内分泌系に及ぼす影響や、ホルモン関連の影響などが調べられるが、今回は細胞への悪影響が調べられた。

 

実はカフェインは、アデノシン受容体を「不活性化」させることで概日リズムを増やし、覚醒状態を維持する一方、プラスチックに含まれる化学物質はアデノシン受容体を「活性化」させ、覚醒状態を維持するそうだ。

 

またアデノシン受容体は脳内にあり、「太陽が昇ってきた。さあ、一日を始めよう」という信号を体に送るのだが、アデノシン受容体が化学物質によって「活性化」されると、そのメッセージが伝達されず、体の自然な生理学的プロセスが遅れる可能性がある。

 

ノルウェー科学技術研究所のプラスチック化学研究者で、本研究の共著者であるマーティン・ワグナー氏によれば、これらの化学物質はカフェインほど強力ではないが、細胞プロセスへの影響は、プラスチックがホルモンに与える影響よりもはるかに速いという。ワグナー氏は、次のように述べている。

 

「その(体への影響についての)重要性は分かりませんし、『たった15分だから、大したはことない』と言うこともできますが、厳密に制御された時計なので、これは大きな変化です」

 

ただしワグナー氏によれば、まだプラスチックの曝露による正確な影響を知るには、さらなる研究が必要だという。(了)

 

出典元:The Guardian:Plastics in everyday objects may disrupt sleep in same way as caffeine, study finds(5/9)

記事が気に入ったら
Switch Newsをフォローしよう!


Return Top