40年前にお蔵入りになったNASAの宇宙服第1号、知られざる「ハードタイプ」とは?
宇宙服と聞いて誰もが思い浮かべるのは、オーバーサイズの白いジャンプスーツのようなものだろう。人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロング飛行士も、そのタイプの宇宙服を着ていた。
だが、こういった「ソフト」タイプの宇宙服以外に、NASA(アメリカ航空宇宙局)はもう1つのタイプ、「ハード」タイプの宇宙服の開発を進めていた。
実用化されなかったため、存在することさえほとんど知られていない「ハード」タイプの写真が、NASAのイメージアーカイブに公開されている。
1966年〜1990年に作られたもの
米国カリフォルニア州にあるNASAの研究施設「エイムズ研究センター(Ames Research Center)」では、1966年から1990年にかけて、ハードタイプの宇宙服の開発が進められていた。
開発プロジェクトの中心となったのは、NASAの研究者であり、宇宙服のデザイナーでもあったHubert Vykukalという人物だ。彼が考案したハードタイプの宇宙服には複数のバージョンがあり、まとめてAXシリーズと呼ばれている。そこにはさまざまな特許技術が使われている。
ロボットスーツのよう
AXシリーズは、基本的に、金属の筒をつなぎ合わせて出来ている。関節部分にはボールベアリングが埋め込まれており、滑らかに動かせるようになっている。胴体の腹の部分や膝は金属製のジャバラなので、前屈姿勢も取れる。
もしこれがアポロ計画で採用され、人類初の月面着陸で着用されていたら、Vykukal氏は一躍有名になっていただろう。だが、NASAはソフトタイプを採用した。ハードタイプは完成していて欠陥はなかったらしい。なぜソフトタイプが選ばれたのか、理由は分かっていない。
陽の目を見ることなくお蔵入りしたハードタイプだが、そこに生かされた様々なアイディアは、後の宇宙服デザイン(設計)に受け継がれているそうだ。現在国際宇宙ステーションの乗組員が着用している宇宙服にも、部分的にだが、取り入れられているという。(了)
出典元:FLASHBAK:NASA’s Number 1 Space Suits Model(10/9)
出典元:Nag on the Lake