ドイツで発見された類人猿の化石が二足歩行の起源を物語る
ドイツで発見された約1000万年前の大型類人猿の化石により、これまでの人類進化の見方が変わる可能性が出てきた。
この研究論文はドイツやカナダ、ベルギー、アメリカなどの国際的な研究チームによって作成され、11月6日に科学誌「NATURE」において発表された。
1170万年前から1140万年前の化石
その類人猿の化石は2015年から2018年にかけて、ドイツのテュービンゲン大学・ゼンケンベルクセンターのMadelaine Böhme氏が率いる研究チームによって発見されたという。
発掘された場所はバイエルン州の町、プフォルツェン付近にあるハンマーシュミーデ。この化石の類人猿は、「Danuvius guggenmosi(以下、ダヌビウス)」と分類された。
また発掘現場での調査により、この地域が湿潤で樹木に覆われた生態系が広がっていたことや、この化石が1170万年前から1140万年前(中新世中期から後期)のものであることが明らかにされたそうだ。
二足歩行の起源に関する議論
ダーウィン以来、人類や人間の親戚に属する種、そして現存する大型類人猿に関する初期進化には、かねてから激しい議論が起きていたという。
その議論の中心にあったのは、人類の直立二足歩行の起源について。つまり現在の猿のような樹上で暮らす4足歩行の動物や、オラウータンのような樹木にぶら下がっていた動物、チンパンジーと似て拳をついて歩いていた動物など、人間がどれから進化したのかという点だ。
150年以上かけてさまざまな仮説が唱えられたが、それぞれの主張を支える証拠となる化石が欠如していたそうだ。しかし今回、ドイツで発見された化石により、二足歩行の起源となる直接の証拠が明らかにされたという。
ほぼ完璧に残っていた骨から動きを再現
発掘されたダヌビウスの化石には少なくとも4体が含まれ、そのうち完璧に近い状態で残ったオスの化石は、ボノボ(ピグミーチンパンジー)のような体の比率をしていたという。
また、その化石には脊椎や足の骨、指やつま先の骨などが含まれていたため、研究者らはダヌビウスがどのように動いていくのかを再現することができたそうだ。
主筆のMadelaine Böhme氏は「ある種の似た骨がどれほど人類に似ていて、大型類人猿には似てないことを、私たちが気づけたのは驚くべきことです」と語っている。
樹上生活で二足歩行が進化した?
ダヌビウスは直立二足歩行と、類人猿のように垂直に木の幹を登る動きの2つを組み合わせていたという。
このような「場所による移動」の仕方があまりにもユニークなため、研究者らは新しい言葉「extended limb clambering (ELC:派生的に四肢でよじ登る行動)」を作らねばならなかったそうだ。
そして研究者らはELCが人類の最も近い共通の祖先の動きを、大型類人猿のものとして表せる可能性があると結論づけた。
その理由はELCには、二足歩行に比重が置かれた後ろ足と、現存する典型的な類人猿の木を登るのに特化した前足(手)とが組み合わさっていたからだ。
これらの結果は、1200万年以上も前に、人間の直立2足歩行が樹上生活の状況において進化したことを示唆しているという。
しかもその後のオラウータン科の動物とは対照的に、ダヌビウスは強力な外転させられる大きなつま先を持っており、これにより大きな枝から小枝まで安全に握ることができたそうだ。
研究者らによれば、今回の発見は従来の類人猿と人類の進化の見方に挑むという点においても、古人類学上の大きな到達点になると述べている。(了)
出典元:National Museum of Natural History:Remains of a new hominid from Germany (more than 11.5 million years old) change our views on the evolution of great apes and humans(11/6)