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宇宙滞在中の飛行士に、命にかかわる血栓が見つかった

宇宙滞在中の飛行士に、命にかかわる血栓が見つかった
Wikimedia Commons

国際宇宙ステーションに滞在中の乗務員の一人に、健康上の重大な問題が見つかった。

 

プライバシー保護のため乗務員の名は明かされていないが、問題とされているのは頸部静脈の深部にできた血栓。この血栓そのものによる顕著な症状はないが、血栓となっている血塊が脳、肺、心臓などに移動すると命取りになる。

 

NASA(アメリカ航空宇宙局)は専門医の協力を得て、地上から乗務員の診断と応急処置を進めた。

 

電話で医師が直接話す

 

NASAからの依頼を受けたカリフォルニア大学のStephan Moll医師は、当初、自分が国際宇宙ステーションに行くことを考えていたと話す。

 

NASAから最初に連絡を受けた時、私は直接患者を診察したかったので、宇宙ステーションに行けるのかと尋ねました。

私を乗せるロケットをすぐに打ち上げるわけにはいかない、というのがNASAの答えでした。なので、チャペルヒルの自宅から、診断と処置を進めることにしたのです。

 

乗務員に血栓が見つかったのは、宇宙での乗務に入ってから2ヵ月目のこと。これまでの前例はなく、無重力状態での治療法は確立されていない。Moll医師はこう言う。

 

通常なら、まず血液希釈剤を3ヶ月間投与して血塊が大きくなるのを防ぐのですが、そうすると血が薄くなってしまい、何かの怪我で内出血したとき止血が困難になります。宇宙に救急治療室はないので、慎重に考えて対処する必要がありました。

 

宇宙ステーションに積まれた血液希釈剤はごく少量だったため、Moll医師は、血液凝固阻止剤であるエノキサパリンナトリウムの注射を指示した。また、放射線科医の助言に従って、乗務員自身が超音波(エコー)検査を行なった。

 

このような処置は90日以上続けられ、その間Moll医師は、自宅の電話で宇宙ステーションの乗務員とやり取りしたそうだ。(国際電話で話すより回線状態が良かったらしい)

 

無重力と血栓リスクの関係は?

 

その乗務員は、無重力状態での血流を調べる実験に参加していたため、血栓が見つかった。宇宙では血栓ができやすくなるのか? それはMoll医師にも分からない。

 

これは宇宙で起こりやすいことなのでしょうか?深部静脈血栓のリスクを減らすにはどうすれば良いのか? 宇宙ステーションにそのための薬を常備しておくべきなのか?将来、宇宙飛行士たちが月や火星でより長期間過ごすようになるまでに、こうした疑問は解決されなければなりません。

 

乗務員の血栓についてはこれまで公開されていなかった。現在その乗務員は地上に帰還し、健康状態は良好であるとのこと。(了)

 

出典元:Space.com:An Astronaut Got a Blood Clot in Space. Here’s How Doctors on Earth Fixed It.(1/4)

出典元:Metro:Emergency in space as Nasa astronaut suffers potentially deadly blood clot(1/3)

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