NASAが作った「宇宙の匂い」を香水に、クラウドファンディングで生産販売へ
10年以上前にNASAが作っていた「宇宙の匂い」がする香水を、調香師を中心とするグループが再現。生産販売のためにクラウドファンディングを開始した。
飛行士を訓練するための香水
NASA(アメリカ航空宇宙局)は2008年、化学者であり、後に食品用香料開発メーカーを設立したSteve Pearce氏に、ある依頼をした。それは、「宇宙の匂い」を実験室内で再現して欲しい、というもの。
目的は、宇宙飛行士の訓練だった。飛行士が初めて船外活動を行うとき、未経験の匂いを嗅いで動揺しないようにだ。
NASAと正式な契約を結んだPearce氏は、宇宙を経験した複数の飛行士から匂いについての聞き取りを行い、それをもとに「香水」を調合した。
宇宙に匂いがあるというのは不思議な話だが、Pearce氏が参考にした飛行士の証言が海外メディアに紹介されている。そのいくつかを引用しよう。まずはスペースシャトル・ディスカバリーで2009年に宇宙に行ったTony Antonelli飛行士。彼は宇宙船のハッチを開けて初めて外に出た時のことをこう話している。
びっくり仰天しましたよ。それまで10年近く訓練を続けてきましたが、宇宙に匂いがあるとは誰も教えてくれませんでした。
それは、独特な、強い匂いです。地球上で嗅いだことのあるどんな匂いにも似ていません。金属的な匂いが他のものと混ざったような感じで、どう表現していいかよく分かりません。
国際宇宙ステーション(ISS)に現在も乗船しているDon Pettit飛行士は、匂いについてこう言っている。
言葉で言い表すのは難しいですね。初めてのものを食べて「鶏肉みたいな味がする」と言うような、簡単なものでないのは確かです。それでも何とか言葉にすると、金属的、という形容が最も近いでしょう。どちらかというと、心地良い甘さが感じられる匂いです。
私は大学時代の夏休みに、溶接トーチを使って、森の中の伐採用重機を修理するバイトをしたことがあるんですが、その時の、鉄が溶ける甘い匂いを思い出します。それが宇宙の匂いなんです。
クラウドファンディングで匂いを再現
Pearce氏が数年がかりで作り上げた「宇宙の匂い」は、その後約10年の間、部外秘とされていた。今回クラウドファンディングを開始したグループは、米国の情報公開法に基づいて、NASAに関連資料の公開を求めたそうだ。その中には調合レシピもあったらしい。
彼らが生産販売しようとしているのは、Pearce氏のレシピに少し手を加えた香水だそう。名称は「Eau de Space(オー・ド・スペース)」。ステーキの焦げと、ラズベリーと、ラム酒が混ざったような匂いだとのこと。(了)
出典元:CNN:This is what space smells like(6/30)
出典元:Mail Online:What does space smell like? Firm recreates the aroma as a fragrance based on accounts from NASA astronauts who say it is a mixture of seared steak, raspberries and rum(7/1)