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中国科学技術大学が、1km先に隠れた物を見分けるレーザー技術を開発、自動運転車への応用が期待される

中国科学技術大学が、1km先に隠れた物を見分けるレーザー技術を開発、自動運転車への応用が期待される
Proceedings of the National Academy of Sciences

中国の科学者が、壁の陰に隠された物の形を、1km以上離れた先からレーザーを当てて見分ける技術を開発した。例えばアパートの部屋に置いたマネキン人形の姿が、窓から見えなくても分かってしまうという。

 

跳ね返ってくる光子の時間差を利用

 

中国科学技術大学の研究者グループは、アパートの11階の室内にマネキンを置き、そこから1.43km離れた大学キャンパスから、窓に向けてレーザーを照射した。マネキンは、窓から直接見えないよう、衝立ての裏に置かれたが、照射したレーザーパルスの跳ね返りを計測してその形を描きだすことに成功。詳細を科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に発表した

 

Proceedings of the National Academy of Sciences

 

なぜ見えない場所にある物の形が分かるかというと、レーザーの跳ね返りを利用している。アパートの部屋に入ったレーザーの光子は、壁に反射して、窓から見えない場所にまで届く。そこにマネキンのような物があれば、光子はそこで拡散し、あちこちにある壁にさらに反射することになる。

 

細いレーザーパルスを角度を変えて何発も発射し、窓を望遠鏡で見たとすれば、理論的には、壁にだけ反射した光が見えるより、マネキンに当たった光が見えるまでの時間の方が(何度も反射しているので)長くなるだろう。この時間差をセンサーで検出し、計算処理すると、マネキンの形が分かるというわけだ。

 

Proceedings of the National Academy of Sciences

軍事用にも、自動運転車の安全確認にも

 

実はこの技術、原理的にはすでに知られており、「Non-line-of-sight (NLOS) イメージング」と呼ばれている。(日本では「障害物による見通し外イメージング」「非視線方向イメージング」などと訳されている)ただ、数メートルという近距離からレーザーを照射しなければならず、実用的ではなかった。

 

中国技術大学は、レーザーの跳ね返りを遠くからでも検出できる望遠鏡付きのセンサーを開発し、距離の影響を受けずにそのデータを分析する独自のアルゴリズムを用いて、有効距離を1.43kmにまで伸ばした。

 

長距離で使えるとなると、軍事用や救助活動などでの実用性が出てくるだろう。また、開発に携わった研究者の一人、Wu Chen氏によれば、自動運転車に搭載すれば、ビルの陰から飛び出してくる人や車を事前に察知することも可能だとのこと。(了)

 

出典元:South China Morning Post:Chinese scientists develop laser that can spot hidden object from more than a kilometre away(3/17)

出典元:中国科学技術大学:Seeing Invisible: Scientists Attain Non–Line-of-Sight Imaging over 1.43 Km(3/17)

出典元:MailOnline:Laser capable of ‘seeing’ hidden objects from a mile away by calculating how long photons take to travel back and forth could help self-driving cars identify pedestrians(3/24)

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