南極に超巨大なコオリウオのコロニーを発見、6000万個の巣が海底に広がる
南極の海底で、ある魚の巨大なコロニーが研究者によって発見され、注目を集めている。
約240平方キロメートルにわたり広がる
その魚とは南極の海で暮らしている、ノトセニアアイスフィッシュ(アイスフィッシュ:和名・コオリウオ)だ。
昨年2月、生物学者のチームが南極のウェッデル海南部の海底を探索し、写真やビデオで撮影しながらデータを収集していたところ、多くのアイスフィッシュの繁殖コロニー(巣)を偶然、発見した。
1つのコロニーには1735個の卵があり、それを成魚が守っていたが、このエリアではコロニーが約6000万個もあり、約240平方キロメートルにわたって海底に広がっていたという。
この広さは「ロンドンの3分の1ほどの大きさ」ともいわれている。
海の生態系がコロニーの影響を受けている
これまで見つかったアイスフィッシュのコロニーは、わずか60個。それに比べて今回の巣の広がりは、前例のないものだという。
このためウェッデル海の生態系全体が、これらのコロニーの影響を受けていることを示唆していると、研究者たちは考えている。
調査に携わったドイツ・アルフレッド・ヴェゲナー極地海洋研究所のAutun Purser氏は、発見した当時の様子について次のように述べている。
「通常の南極の海底が見られると期待していましたが、潜水開始後4時間は、魚の巣以外何も見られませんでした。(略)アザラシがこれらの魚の巣を食べている可能性は極めて高いと思います。もし魚の巣がなくなれば、アザラシもいなくなるかもしれない。少なくともウェッデル海の生態系に影響を与え、南極海域の他の場所にも影響を与える可能性があるのです」
「深海には生命が豊富に存在する」
もっともこの深海の生態系を理解するには、この記録だけでは不十分だという。その上でPurser氏は次のように語る。
「深海は砂漠のような荒れ地ではなく、生命が豊富に存在するのです。我々が知らなかったこれほど大規模な生態系があるという事実は、おそらくまだ発見されていないものが、どれほどあるのかを示しています」
カメラは今後2年間、コロニーを監視し、それがどのように機能し、他の生態系とどのように相互作用するかを見極めるという。
また研究者たちは2022年4月にこの地域に戻り、周辺海域を調査し、この魚が同じ巣で再び繁殖するかどうかを確認する予定としている。(了)
出典元:The Guardian:‘Nothing but fish nests’: huge icefish colony found in Antarctic sea(1/13)