火星には2種類の音速があると判明:NASA
火星では、高い音と低い音の伝わる速さに差があるという。NASAの火星探査データを分析した科学者グループが明らかにした。NASAジェット推進研究所のニュースリリースや海外メディアで報じられている。
火星探査車の録音データを比較
昨年2月に火星に着陸した火星探査車「パーサヴィアランス」は、搭載されたマイクで初めて火星の音を録音した。クレーターを吹き渡る風の音や、探査車自身が立てる音、実験機である小型ヘリコプターの飛行音などが録音されているが、それらを分析していた科学者グループが、興味深い発見をしたという。
きっかけになったのは、探査車のレーザーが岩のサンプルを削り取る際に発生する「パチッ、パチッ」という高音ノイズと、小型ヘリコプターが飛行するときの「ブーン」という低音の比較だ。
レーザーが発射された瞬間の時刻と、そのレーザーが岩に当って立てた音が録音された時刻は、データとして残っている。マイクとレーザーとの距離も分かっている。また同様に、小型ヘリコプターとマイクの距離や、回転翼の始動時刻、録音時刻もわかっている。これらの数値から、音が伝わった速度を算出したところ、低音の(ヘリコプターの)ノイズは毎秒240m、高音の(レーザーの)ノイズは毎秒250mと、2つに差があることが分かった。
地球上ではもちろん、2つの音速などあり得ない。音速は毎秒343mと、1つにきまっている。
火星では音の聴こえ方が変わる
科学者チームのリーダーを務めるSylvestre Maurice氏は、当初、2種類の音速があるとは信じられなかった。海外メディアにこう話している。
「(計算結果を知って)少しパニックになりました。2つのうちどちらかの測定値が間違っているのだ、と自分に言い聞かせました。だって地球じゃ、音速はただ1つなんですからね」
だが、実際、速度に差があるということは、火星では高い音がわずかに早く人の耳に入る。そうなると……
「例えばオーケストラの音は、地球ならば、高い音も低い音も全て同時に耳に入って来ます。しかし、火星では、ステージからちょっと離れると、高音と低音に大きな時間差ができるはずです。するとどういう音になるか、想像してみてください」とMaurice氏は言う。
また、2人の人間が5mほど離れるだけで、会話が困難になってしまうらしい。音速に差が出る理由は、火星の大気組成と密度、温度などに関係あるらしい。(了)
出典元:Phys Org:First audio recorded on Mars reveals two speeds of sound(4/1)
出典元:MailOnline:There are TWO speeds of sound on Mars – one for high-pitched noises like the zap of a laser and another for lower frequencies like the whir of a helicopter rotor, study finds(4/1)