カンブリア紀の海洋捕食動物の化石、保存状態が良く脳まで残っていた!
古生代の捕食動物の化石が発見され、非常に保存状態が良いことが明らかにされた。
「スタンレーカリス・ヒルペックス」
その捕食動物とは、カンブリア紀に海で暮らしていた「スタンレーカリス・ヒルペックス(S. hirpex)」だ。
この動物は口から棘のあるカギ爪が出ており、目は横に飛び出していたという。
そして今回、カナダのトロントにあるロイヤル・オンタリオ博物館(ROM)の研究者は、5億600万年前の保存状態の良い、「S. hirpex」の化石を発見したと発表した。
脳や脳神経まで残っていた
この化石は、以前ブリティッシュコロンビア州のカナディアンロッキーの地層で発見され、岩石には多数の「S. hirpex」の標本が含まれていたという。
しかも調査の結果、「S. hirpex」の化石には脳や脳神経まで残っていたそうだ。
研究論文の主執筆者で、トロント大学のジョセフ・モイシウク氏は、次のように語っている。
「この発見が非常に注目に値するのは、脳や他の神経系の残骸を示す数十の標本があったことです。それらが信じられないほどよく保存されていて、本当に細かいところまで見えていたのです。これ以前には、特にカンブリア紀のものでは、化石化した脳がいくつか発見されただけでした。これは非常に珍しいもので、ここ10年程で観察された唯一のものです。我々が脳の化石を見た種のほとんどは、1つか2つの標本しかありません」
現代の昆虫とは異なる脳構造
化石の「S. hirpex」の体長は20センチ未満。この小さい化石を調べた結果、「S. hirpex」の脳は、目につながる前大脳(protocerebrum)と、カギ爪につながる中大脳(deutocerebrum)の2つに分かれていたことが判明したという。
しかもこの脳の構造は、「S. hirpex」の遠縁にあたる現代の節足動物(昆虫など)の3葉構造とは異なるそうだ。
実際に昆虫の脳は、前大脳(protocerebrum)、中大脳(deutocerebrum)、後大脳(tritocerebrum)の3つから構成されており、前大脳は昆虫の唇(上唇)などにつながっているとか。
モイシウク氏は「これらの動物の脳が保存されていることは、(略)神経系の進化について直接的な洞察を与えてくれます」と述べている。(了)
出典元:Livescience:‘Astonishing’ 500 million-year-old fossils preserved the brain of this creepy 3-eyed predator(7/8)