科学者が研究室で「ミニ脳」を開発、テニスゲームのプレーも可能に
オーストラリアの研究室で育てられた小さな脳が、ビデオゲームができるまでになったという。
2013年に初めて研究室で作られる
『ニューロン』誌によれば、オーストラリアにあるコルティカル・ラボ社のブレット・カガン博士は、実験室で初めて思考を持つ「ミニ脳」を作り出したと主張しているという。
この「ミニ脳」は2013年に、小頭症(脳が小さすぎる遺伝性疾患)の研究のために初めて研究室で作られ、それ以来、脳の発達の研究に使われてきたそうだ。
しかし外部環境に接続し、相互作用させるのは今回が初めてで、この「ミニ脳」が昔のテニスゲームのような「Pong」をプレーできるようになったという。
Intelligence at the cellular level?
Human brain cells in a dish learned to play a video game (Pong)https://t.co/UBurU3nBRF @NeuroCellPress pic.twitter.com/hU3pYhUOHB— Eric Topol (@EricTopol) October 12, 2022
「ミニ脳」をビデオゲームに接続し調査
研究チームはまず、幹細胞から育てたヒトの脳細胞と、マウスの胚から育てた脳細胞の一部を育て、80万個の集積体に増やしたという。
その後、電極を介してこの「ミニ脳」をビデオゲームに接続し、ボールがどちらの側にあるか、パドル(ラケットの棒)からどのくらい離れているかを調べたそうだ。
その結果、細胞は自ら電気活動を行うようになり、「ミニ脳」は5分でゲームを覚えたという。
もっとも「ミニ脳」には意識がないため、人間のように自分がゲームをプレーしているとはわかっていない。ただしその成功率は、偶然の一致をはるかに超えていたそうだ。
感覚はなく、「思考」のみ
この「ミニ脳」は「感覚」を持つというより、刺激によって情報が伝達され、それが利用されて変化を引き起こすため、基本的な方法で「思考」しているという
ケーガン博士は、この技術がいずれアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療法のテストに使われるかもしれないと期待している。
しかし同時に、博士の研究チームは生命倫理学者と協力して、誤って意識のある脳を作らないように、またそれによって生じるあらゆる倫理的問題を解決するために努力しているそうだ。(了)
出典元:BBC:Lab-grown brain cells play video game Pong(10/13)