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チェルノブイリ原発周辺の犬は、遺伝的に大きく異なることが判明

チェルノブイリ原発周辺の犬は、遺伝的に大きく異なることが判明
YouTube/Clean Futures Fund

ウクライナにあるチェルノブイリ(チョルノ―ビリ)原子力発電所付近で暮らす犬が、他の地域の犬に比べ、遺伝的に著しく異なることが明らかになった。

 

他の国や地域の犬と比較

 

この研究を行ったのは、アメリカ・メリーランド州にある国立ヒトゲノム研究所のエレイン・オストランダー氏と、ガブリエラ・スパトラ氏らだ。

 

彼らは2017年から2019年にかけて、チョルノ―ビリ地域で暮らす犬、302匹から血液サンプルを採取し、ゲノムの配列を決定したという。

 

その後、研究者らはこれらの犬のゲノムを、ウクライナの他の地域と近隣の12カ国で飼育されている200頭以上の自由繁殖犬(野良犬など)のゲノムと比較。

 

その結果、原発に近いチョルノ―ビリ市に住む犬のゲノムはいずれも、他の国やウクライナの他の地域、または近くのスラブチチ市に暮らす犬のゲノムとも著しく異なっていたという。

 

132匹は原発付近で暮らしていた

 

サンプリングされた302匹の犬のうち132匹は、使用済み核燃料を保管する施設内、原発に隣接する鉄道駅、あるいは原発を直接囲む森の中など、原発に近い場所で暮らしていたという。

 

また、154匹は原発から15km離れた廃墟のようなチョルノ―ビリ市の野良犬で、最後の16匹は、原発から45キロ離れた放射線被曝が少ない、スラブチチ市の野良犬とされている。

 

研究対象となった犬たちはすべて、特定の犬種ではなく混血(雑種)だったが、チョルノ―ビリ市と原子力発電所の近くに住む犬たちは、遺伝的に最もジャーマンシェパードに近いことが示唆されたそうだ。

 

遺伝的な違いの原因は不明

 

この遺伝的な違いが、放射線によるゲノムの変化なのか、あるいは特定の遺伝的特徴を持つ個体が放射線から生き残り、その遺伝子を受け継ぐ可能性が高いのか、あるいは37年間、相対的に隔離されていたために近親交配が進んだ結果なのかは、現段階では不明だという。

 

オストランダー氏は、次のように述べている。

 

「私たちは、次に行いたい調査(実験)をするために、必要な最初のステップとして、これらの異なる集団の特徴を明らかにしなければなりませんでした。次の調査は、チョルノ―ビリの犬たちが、放射線、低温、限られた食料という過酷な環境の中で、どのように生き延びてきたかを調べることです」

 

また研究者たちは、チョルノ―ビリの犬のゲノムを、原発事故以前の博物館にある犬の標本と比較し、遺伝子変化の証拠を探す予定だとしている。

 

原発事故後、ペットたちは殺処分

 

1986年にチョルノ―ビリ原子力発電所が爆発した後、近隣に住む人々は避難を余儀なくされ、その際に動物が放射能汚染を広げることを防ぐため、ペットは当局によって殺処分されたという。

 

しかし、中には当局から逃れ、清掃作業員によって餌を与えられ、世話された犬もおり、現在800匹以上の犬が原発周辺に生息していると考えられている。(了)

 

出典元:New Scientist:Dogs living near Chernobyl are genetically different to other groups(3/3)

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