アジアゾウの生息域が南アジア全域で減少、1700年以降64%も喪失
アジアゾウの生息域が、かなり減少していることが、4月27日に「Scientific Reports」誌において発表された。
約330万平方キロメートルも減少
その発表によると、アジアゾウの生息地は、1700年以降、南アジア全域で64%以上、約330万平方キロメートルも減少したという。
この時期は、南アジアにおける植民地時代の土地利用と、それに続く農業の集約化の時期と一致するそうだ。
この研究論文の著者である、カリフォルニア大学サンディエゴ校の生態学助教授・Shermin de Silva氏によれば、1600年代後半から1700年代前半にかけて、ゾウの生態系に「大きな変化」が起きたという。
また植民地時代に始まった土地利用が、ヨーロッパでの産業革命につながり、世界中の資源が搾取されるようになったとした上で、de Silva氏は次のように述べている。
「この300年の間に、ゾウにとって適切であった風景の3分の2近くが失われたのです。そして、現在あるのは、非常に断片化されたもの(生息域)です」
中国とインドで最も生息域が減少
またde Silva氏によれば、20世紀半ばにおける、産業としての農業の台頭も、深刻な生息地の喪失につながったという。
実際に中国本土、インド、バングラデシュ、タイ、ベトナム、スマトラ島では、それぞれゾウの生息に適した地域の半分以上が失われてしまったとか。中でも最も生息域が減少したのは、中国とインドになるそうだ。
しかもde Silva氏によれば、現在アジアゾウが存在する地域でさえ、ゾウの生息に適した土地は50%しかないという。
ゾウは生態系の指標となる
そもそもゾウは「エコシステム・エンジニア」という異名を持ち、他の動物の生態系にとっても重要だと言われてきた。
de Silva氏によれば、アジアゾウは、比較的乾燥した草原や緑豊かな熱帯雨林など、多様な生息環境に適応できるため、さまざまな種類の生態系の指標になり得るという。
このため今回の研究における発見は重要で、「アジアの景観が時間とともに、どれほど変化してきたかを浮き彫りにしている」とde Silva氏は語っている。
アジアゾウは、国際自然保護連合の「絶滅危惧種レッドリスト」で絶滅危惧種に指定されている。(了)
出典元:ABC News:Asian elephants have lost 64% of their suitable habitat, scientists say(4/28)