永久凍土に閉じ込められていた線虫、4万6000年の眠りから目覚める
4万6000年もの間、シベリアの永久凍土に閉じ込められ仮死状態だった回虫を、科学者が蘇らせた。
蘇生し、子供も産み始める
その生物は「Rip Van Winkle回虫」と呼ばれ、メスで、実験室のシャーレの中で再び動き出し、子供も産み始めたという。
また科学者がゲノムを解読した結果、この回虫が線虫の新種であることが明らかになり、その後「Panagrolaimus kolymaensis」と名付けられた。
線虫が含まれていた凍土は、地表から約30メートル下、古代のホリネズミが堀った穴から回収されたという。
科学者たちは放射性炭素年代測定法を用いて、その土が4万6000年前のものであることを確認。その時代は、新生代の更新世にあたる。
この研究論文の著者の1人で、ケルン大学動物学研究所のグループリーダーであるフィリップ・シファー氏は、この線虫が、どのように休眠するのかを研究する必要があるとし、次のように述べている。
「現在生きている種や人類を助けるためにも、進化の過程で、この種がどのように極限環境に適応したかを知る必要があります」
この研究は、7月27日に、科学誌「Plos Genetics」において発表された。
「クリプトビオシス」で深い眠りに
ある種の微小生物は過酷な環境を生き抜くために生命活動を一時停止し、「クリプトビオシス」と呼ばれるプロセスで、代謝を検出できないレベルまで低下させることで、深い眠りにつくことができるという
2021年、ロシアの研究者たちは、シベリアの永久凍土で回収した古代の多細胞動物である「ヒルガタワムシ(bdelloid rotifers)」を、2万4000年ぶりに復活させたと発表した。
しかし、線虫の蘇生記録は今まで、数十年後に再び蠢き始めた南極の種しかいなかったという。
急激に温めないよう解凍するだけ
シファー氏によれば、これらの生物を復活させるための方法はいたって簡単だという。
実際に、あまり急激に温めないように注意しながら土壌を解凍すると、線虫がもぞもぞと動き回り、実験皿の中のバクテリアを食べて繁殖したそうだ。
現在は、4万6000年前のオリジナルの線虫はもう生きていないが、科学者たちはこの1匹の線虫から100世代以上を育て続けているという。
しかもこの種は単為生殖と呼ばれる過程を経て、交尾相手なしで繁殖できるそうだ。(了)
出典元:The Washington Post:Scientists woke up a 46,000-year-old roundworm from Siberian permafrost(7/27)