ADHDと診断された大人は、認知症のリスクが高くなる可能性
大人になってからADHD(注意欠如・多動症)と診断された人は、その後、認知症を発症するリスクが高くなる可能性が、研究で示された。
10万人のカルテを調査・追跡
この研究を行ったのは、イスラエルのハイファ大学、スティーブン・レバイン博士が率いる研究チームだ。
彼らはイスラエルの非営利医療維持組織(HMO)「Meuhedet Healthcare Services」に残された、10万9218人(平均年齢57.7歳)の電子カルテを調査した。
この研究は2003年1月に開始され、2020年2月の研究終了までに、研究者らは死亡またはHMOからの離脱、認知症と診断された人の記録を追跡したという。
調査期間中に成人ADHDと診断されたのは、730人。そのうち96人(13%)が認知症と診断された。一方、成人期にADHDと診断されなかった人で、認知症になった人は7630人(7%)だったそうだ。
さらに年齢、性別、社会経済的地位、喫煙、さまざまな健康状態などの要因を考慮した結果、研究チームは、調査期間中に成人型ADHDと診断された人は、認知症と診断されるリスクが2.77倍高いことを明らかにした。
さらなる研究が必要
成人のADHDに関与するプロセスは、神経変性や脳内の血流を含む、人生の後半に起こる可能性のあるプロセスの影響を補うために、脳の能力を低下させる可能性があると言う。
今回の研究論文の筆頭著者であるレバイン博士は、次のように述べている。
「これは、成人のADHDが認知症リスクを増加させるという主要な結果と一致しており、逆の因果関係に対する緩やかな証拠です」
また今回の研究では、ADHDの薬物療法が状況を変えたことも示唆された。
実際に、「精神刺激薬(ADHDの治療薬)」の服用歴のある人では、ADHDと認知症リスクとの間に明確な関連はみられなかったという。
ただし、この知見にはさらなる研究が必要であると研究者らは述べている。
また他の専門家も、これらの関連を証明するにはさらなる研究が必要であり、ADHDに見られる脳内神経伝達物質のレベルの乱れが、認知症発症のリスクの高さと関連しているかどうかを、今後探る必要があると指摘している。(了)
出典元:The Guardian:People diagnosed with ADHD as adults could be ‘at greater risk of dementia’(10/17)