わずか100の企業が、世界の温室効果ガスの71%も排出していた:CDP報告
世界の温室効果ガスの71%が、たった100の企業によって生み出されていたことが、新しく発表された報告書で明らかにされた。
企業に情報公開を求める組織が調査
この調査及び報告を行なったのはCarbon Disclosure Project(CDP)。
この組織は機関投資家らが連携し、企業に対して気候変動の戦略や、温室効果ガスの排出量に関する情報の公表を求めるプロジェクトとされている。
そしてこの組織が7月に発表した報告書「Carbon Majors Report」の中で、過去約30年間において世界のわずか100社が、地球の温室効果ガスの71%も排出していたことが明らかにされた。
またこれらの企業のうち、たった25社が1988年以降、地球上に排出された温室効果ガスの50%以上の供給源となっていることも判明したという。
1位は中国、2位はサウジの国営企業
この報告書では、どの企業がどの程度の割合で温室効果ガスを排出してきたのかを、ランキング形式でリストにまとめ発表している。
なかでも1988年以降、最も温室効果ガスの排出量が多かったのは中国国営の石炭産業で、その割合は14.3%とされている。
2位はサウジアラビアの国営石油会社「Aramco」で、割合は4.5%。
3位は、ロシアで天然ガスの生産や供給を行っている半国営企業「Gazprom」の3.9%となっているそうだ。
一方、機関投資家が所有する民間企業では、石油大手の「エクソン・モービル」や「シェル」「BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)」という名前が挙げられている。
従来のペースでは今世紀末に4℃上昇
CDPによれば1988年までに、すでに多くの企業は自社の製品が環境に対し不安定な影響を及ぼすことを知っていたはずだという。
にもかかわらず、その後も石油や石炭などの掘削や抽出活動を拡大しており、一方それらと比較して二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー分野への投資は、ほとんど見られないそうだ。
そして報告ではこのまま1988年から2017年までと同じペースで化石燃料の抽出が続けば、今世紀末までに地球の平均気温が4℃上昇する可能性がある、としている。
投資家らが企業に取り組むよう促すべき
気象学者らはこれまでも、平均気温が2℃以上上昇すれば、生物の大規模絶滅や洪水被害の拡大など、地球の天候や生態系に破滅的で取り返しのつかない変化をもたらす可能性があると繰り返し主張してきた。
そのためCDPも化石燃料の取引を行っている投資家らに、個別の対話や株主決議などによって企業に対し圧力をかけるよう促しているそうだ。
今回の報告書でも、民間企業が温室効果ガスの5分の1を排出しており、投資家らが気候変動に大きな影響力を及ぼすことができると指摘している。
またこれをしなければ投資家自身もリスクに直面する恐れがあるため、各企業に対し気候変動のシナリオによる効果の分析や、低炭素社会への移行プランの作成、新しい技術への投資などを確実に行わせるべきだという。
報告書のデータを収集したCarbon Majors Databaseの技術部長、Pedro Faria氏は次のように述べている。
「私たちの目的は企業を名指し、辱めることではありません。透明性を提供し、100社がこの問題に関し、決定的な役割を果たしているという非常に驚くべき事実に注意を促すことなのです。この問題において、企業に責任の一端があることは明らかなことです」
もっとも石油会社の中には、再生可能エネルギー分野への投資について新たな動きもあるという。
実際に「シェル」は今週の月曜日に、再生可能エネルギー部門に10億ドル(約1130億円)の投資を行う計画を発表したそうだ。
しかしまだまだ報告書に出ている多くの企業が率先して問題に取り組まない限り、気候変動は避けられないのかもしれない。(了)
出展元:INDEPENDENT:Just 100 companies responsible for 71% of greenhouse gas emissions, report says(7/10)