米政府が難病の移民女性に退去勧告、事実上の死刑宣告だとして非難の声が上がる
トランプ政権の下した決定によって、1人の移民女性の命が奪われようとしている。
彼女の協力で難病の薬が承認される
その女性とは7歳の時に、グアテマラからアメリカへ移住したMaria Isabel Buesoさん。ニューヨークタイムズによれば、彼女は非常に稀な遺伝的疾患「ムコ多糖症VI型(MPS-6)」にかかっているという。
この病気により彼女の体は小さく、視力も悪く、脊椎の圧迫などによる体の異常に苦しめられ、十数年しか生きられないと宣告されてきたそうだ。
しかし7歳の時、アメリカでこの病気の薬を開発するため臨床テストを実施することになり、その被験者としてMariaさんは医師から招待され、家族と共にグアテマラから移住することに。
またその後、彼女の臨床テストへの参加のおかげで、この病気の薬が米食品医薬品局によって承認され、同じ病気にかかった多くの人々の寿命を延ばすことができたという。
Mariaさんはこれまでも数年間、アメリカで毎週酵素を交換するため点滴治療を受けており、彼女の両親も民間の医療保険に加入し、娘を生かし続けるために医療費を払い続けてきたそうだ。
しかし先日、Mariaさんは米政府から33日以内にアメリカを出国しなければ、国外退去処分にするとの通知を受け取ることに。
人道的見地から保護されていたプログラムを廃止
このような通知を発送する前に、米市民権・移民局は公式の発表もなしに今月、「deferred action」と呼ばれるプログラムを撤廃したという。
このプログラムはMariaさんのような患者や親族が、生命に関わる病気の治療を受けている場合、国外退去を免れるというもの。
しかしトランプ政権になってから、人道的見地によって移民がアメリカに留まることができる手続きを取り消し、または変更することになり、今回「deferred actionプログラム」も廃止されることになった。
2003年以来Mariaさんの治療を続け、オリジナルの臨床テストにも取り組んだ医師のPaul Harmatz,氏は、次のように語っている。
「Mariaさんの参加なしには、臨床テストは行われなかったかもしれません。臨床テストを突破口として、(薬が認められ)病気にかかった人が30年以上も長く生きられることに役立ったのです。薬が作られる前は、患者は滅多に20年も生きられなかったのです。Mariaさんもこの治療をやめれば、彼女の寿命はかなり短くなってしまうのです」
グアテマラに送還されれば現在の治療を受けることはできない。そのため今回の通知は、Mariaさんへの事実上の「死刑宣告」にも等しいと言われている。Mariaさんも次のように語っている。
「私はずっと強い恐怖を感じ、耐えられずにいます。私の受けている治療が、私を生かし続けているのです」
今回の決定には手続きの不備や、不透明性などが指摘され、担当部署も混乱しているようだが、彼女が強制送還されないことを願う。(了)
※これはThe New York Timesの記事を要約したものになります。彼女への支援は「Change.Org」からできます。
出典元:The New York Times:Sick Migrants Undergoing Lifesaving Care Can Now Be Deported(8/29)