香港で羊の絵本を書いた5人の作者に有罪判決、扇動罪を適用
香港の裁判所は、ある絵本を書いた5人のスピーチセラピストに有罪判決を下した。
羊がオオカミから村を守る物語
その絵本とは、「香港言語療法士総聯合会」が2020年と2021年に出版した3冊の絵入りの児童書だ。
そのうちの1冊は『羊村の12戦士』というタイトルで、12匹の羊が侵略してきた狼と戦った後、船で村を脱出しなければならず、その後海で捕まり、牢屋に入れられてしまう様子を描いていたという。
そして今回、香港の裁判所は、狼から自分たちの村を守ろうとする羊を描いた一連の絵本が「扇動的出版物」に当たるとして、作成した5人のスピーチセラピストに有罪判決を下した。
昨年7月から拘留され続けてきた
被告となった5人は、Lai Man-kingさん、Melody Yeungさん、Sidney Ngさん、Samuel Chanさん、Fong Tsz-hoさんだ。
彼らは全員20代で、昨年7月から保釈が却下されたまま勾留され続けてきた。
今回の裁判で検察側は、この動物たちは香港の住民と中国本土の人々をそれぞれ例えており、後者に対する憎悪を煽ることを意図していると主張。
一方、弁護側は、本の内容は解釈の余地があり、中国政府に対する武力反乱を呼びかけているわけではないと主張したという。
しかし、香港の指導者によって選ばれた国家安全維持裁判官の一員であるKwok Wai-kin裁判官は、香港に導入された新しい国家安全維持法(国安法)と共に、植民地時代の「扇動罪」を適用し、5人に対し有罪判決を下した。
「中国政府の主権を認めていない」
Kwok Wai-kin裁判官は評決の中で「これらの本は読者の心を導くように書かれており、出版社は中国政府の香港に対する主権を認めていない」と主張。
「扇動的な意図は、単に言葉からではなく、子供たちの心に結果をもたらすために、禁じられた効果を意図した言葉からも、生じている」と語ったという。
また「PRC(中華人民共和国)政府が、何の権利もないのに、自分たち(香港の人)の家を取り上げ、幸せな生活を台無しにするという邪悪な意図を持って香港に来ていると、子供たちは信じ込まされるでしょう」と述べたそうだ。
しかし国安法施行後に香港からイギリスに渡った政治漫画家の「Ah To」さんは、「扇動出版罪」は、イギリスでとっくに廃止された悪法だと主張。
今回の判決についても、基準が主観的であるため、アーティストが自分たちの創作物が扇動的であるかを判断するのは困難だと述べている。(了)
出典元:The Guardian:Hong Kong therapists convicted of sedition over children’s books(9/7)