土星の衛星「エンケラドゥス」から有機物を検出、生命のいる可能性が高まる

土星の衛星から炭素系の物質が噴出しているのが発見され、生命が存在する可能性が高まっている。
地表下で複雑な化学反応が起きている
その物質が発見されたのは、土星の衛星の中で6番目に大きい「エンケラドゥス」だ。
この衛星は以前から、地球外生命のいる天体を探す研究において、有力候補の1つとなってきたという。
その理由は、2017年に打ち上げられた探査機「カッシーニ」によって、「エンケラドゥス」の南極の地表下から、水蒸気と氷の粒子が噴出していることが明らかになったからだ。
そして今回、「カッシーニ」のデータを分析していた研究者たちは、その噴出物の中に有機物を発見し、初めて他のタイプの分子も検出したという。
今回の研究論文の筆頭著者で、ベルリン自由大学の惑星科学者であるNozair Khawaja博士は、「エンケラドゥス」の地表下で起きている化学反応の複雑さがさらに増したとし、「複雑な化学反応が起きているということは、エンケラドゥスの生命居住可能性が今まさに高まっていることを意味します」と述べている。
🆕 The discovery of new complex organic molecules at Saturn’s #Enceladus enhances the likelihood that the moon is habitable 🪐
On Earth, these molecules are involved in chemical reaction chains that lead to the more complex molecules essential for life.
Read more 👉… pic.twitter.com/xtC5DHTtj1
— ESA Science (@esascience) October 1, 2025
純粋なサンプルを検出
「ネイチャー・アストロノミー」誌に発表された研究論文の中で、Khawaja博士らは、以前の研究で、土星の環「Eリング」で発見された氷粒の中に、有機物や塩類が存在することが明らかにされていたという。
「Eリング」は「エンケラドゥス」から噴出した物質で構成されているが、物質は数カ月から数年も前のものであり、その組成は放射線の影響を受けている可能性があるそうだ。
しかし今回の研究では、噴出物自体の中にある、氷粒から収集されたデータを分析。その結果、地表下からの純粋なサンプル、つまり数分前の粒子を捉えることに成功した。
また宇宙塵分析装置(Cosmic Dust Analyzer)と呼ばれる機器のデータに基づく今回の結果では、「Eリング」で以前発見された有機物の存在を確認。しかもそれらが、やはり「エンケラドゥス」内部に起源を持つことを示すだけでなく、他の種類の有機物の存在も明らかになったという。
もっとも今回の発見は、「エンケラドゥス」に生命が存在することを示すものではない。しかしこの結果は、この衛星を調査するという欧州宇宙機関(ESA)の計画を、裏付けるものになるそうだ。(了)
出典元:The Guardian:Prospect of life on Saturn’s moons rises after discovery of organic substances(10/1)