海氷が減少しても、一部のホッキョクグマが環境に適応していた
北極圏では気候変動により海の氷が減少していると言われているが、そんな中でもホッキョクグマが環境に適応している可能性があるという。
淡水の氷や氷河を利用、
そもそもホッキョクグマは北極圏の海氷に依存してアザラシを狩るため、氷の減少により種が絶滅する危機に瀕していると言われてきた。
しかし、科学者によれば、グリーンランド南東部の数百頭が、淡水の氷を利用した狩猟に適応したという。
また研究者たちは、このホッキョクグマが氷河から割れる氷を使っていることも発見したそうだ。
8カ月以上海氷のない状態で暮らす
この研究を行ったのは、アメリカ・ワシントン大学の研究チームだ。
研究論文の主筆を務めたワシントン大学の極地科学者、クリスティン・レイドレ氏によればホッキョクグマは氷河(淡水)の氷にアクセスできるため、1年のうち8カ月以上海氷のないフィヨルドで生存しているという。
このため今回の発見は、気温の上昇にもかかわらず、この種の一部分が生き残る可能性を開くものだと考えられている。
他の集団とは異なるホッキョクグマ
今回、研究チームは、2年間かけてイヌイットのハンターにインタビューを行い、その地域の生態学的知識を共有したという。
また、ヘリコプターで遠隔地に赴き、ホッキョクグマに衛星追跡装置のタグを付け、遺伝子サンプルも収集したそうだ。
この研究の共著者である遺伝学者のベス・シャピロ博士は、「地球上のどこよりも遺伝的に隔離されたホッキョクグマの集団」を観察したとし、「この集団は、少なくとも数百年間、他のホッキョクグマの集団とは別に生活してきたことが分かっています」と語っている。
繁殖速度が遅く、サイズも小さい
またシャピロ博士は、これらのホッキョクグマが「繁栄していない」、つまり繁殖速度が遅く、サイズも小さくなっていると指摘。その上で、これらの個体群が「遺伝的適応のために生存しているのか」、それとも「全く異なる気候や生息地に対する異なる反応」なのかを知ることは困難だと述べている。
現在、ホッキョクグマはおよそ2万6000頭いると言われているが、シャピロ博士は次のように述べている。
「ホッキョクグマは大変なことになっています。地球温暖化の速度を緩めることができなければ、ホッキョクグマは絶滅の一途をたどることは明らかです。この素晴らしい種についてもっと知ることができれば、今後50年から100年の間、彼らが生き残るのを助けることができるようになるでしょう」(了)
出典元:BBC:Some Greenland polar bears adapt to hunt without sea ice(6/17)