国際宇宙ステーションに「幹細胞」が到着、大量生産の実験が始まる
先日、国際宇宙ステーション(ISS)に「幹細胞」が運ばれ、無重力でよりよく成長するかどうかを見る実験が、今後始められるという。
大量に生産する新しい方法を見つける
この研究に携わっているのは、アメリカ・ロサンゼルスにある「Cedars-Sinai Medical Center」の研究者たちだ。
彼らは、体のあらゆる細胞に分化していく「幹細胞」を大量に生産する新しい方法を見つけようとしており、先週末にはそれらが補給船でISSに到着した。
研究者らが送り出したのは「人工多能性幹細胞」と呼ばれるもので、大量に生産できれば、多くの病気の治療法に使える可能性があるという。
重力がゼロだと成長する可能性
そもそも幹細胞を地球上で生産するには、大型のバイオリアクターで細胞を激しく攪拌しなければならない。しかし、このストレスでほとんどの細胞は死んでしまうという。
だが、重力がゼロの世界では、細胞に力がかからないので、別の方法で成長することができる可能性があるそうだ。
そこで今回、靴箱サイズの容器に「幹細胞」や、それを4週間維持するために必要なポンプや溶液をすべて詰めこみ、ISSへ運んだという。
その中には研究者のDhruv Sareen氏自身の「幹細胞」も入っており、彼らは地球上の細胞ボックスと比較するために、遠隔操作で実験を行う予定とされている。
そして5週間ほどで宇宙での実験を終え、同じSpaceX社のカプセルで戻ってくる予定だという。
他のテーマも研究対象に
今回の実験では、幹細胞を大量に生産できるかが調べられるが、同時に宇宙旅行が体内の細胞にどのような影響を与えるかを調べるため、または癌のような病気の理解を深めるためにも行われるという。
ただ、現時点では宇宙へ送られるような「幹細胞」や、そこから得られた他の細胞を使った治療法は承認されていない。
このため、今回の研究の多くが地上で応用されるのは、もう少し先のことだと考えられている。(了)
出典元:ABC News:High-flying experiment: Do stem cells grow better in space?(7/17)