マラッカ海峡で海賊行為が増加、今年は昨年に比べ4倍

南シナ海とインド洋とを結ぶ重要な海上交通路であるマラッカ・シンガポール海峡付近で、海賊行為が横行している。
今年上半期で80件、昨年は約20件
アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)の情報共有センター(ISC)によれば、今年上半期にマラッカ海峡で発生した海賊行為と武装強盗事件は80件で、昨年の同時期は21件だったという。
ReCAAP ISC事務局長のVijay Chafekar氏は、今年の海賊行為と強盗事件の大部分は、シンガポール海峡のフィリップ水路で発生したとし、この狭い水路を航行するために、船舶は減速を余儀なくされていると述べている。
シンガポール、マレーシア、インドネシアの間に位置するマラッカ海峡は、年間で推定9万隻の商船が通過。これは世界の海上貿易の60%を占め、日本の輸入原油の8割も、ここを通ると言われている。
ほとんどの事件で負傷者はなし
ReCAAPのデータによると、この海峡で2025年に発生した事件のうち、銃器や人質事件を含む最も深刻なカテゴリー1に分類されるものはなく、90%の事件で負傷者は出なかったという。
7件の事件ではナイフや模造武器が使用され、乗組員1人が軽傷を負ったそうだ。最も頻繁に標的となった船舶はばら積み貨物船(52%)で、次いでタンカー(24%)、コンテナ船(11%)となっている。
アジア船主協会(ASA)のDaniel Ng氏によると、2025年の事件の犯人は、リアウ島やチュラ島といったインドネシアの離島を拠点とする小規模な組織犯罪グループに所属していることが多いという。
犯人らは、サンパン船(平底木造船)に乗って船舶に接近し、フックとロープの付いた長い棒を使って船に乗り込むそうだ。
海賊行為は主に夜に行われ、犯人らは失業や貧困といった要因により経済的困難に直面していることが多く、収入を補う必要があり、セキュリティ対策を破る技術も向上しているという。
そして犯人が船舶自動識別システム(AIS)のモバイルデータを悪用し、船上のセキュリティを突破するための「抜け穴」を見つけることで、事件が増加しているとも考えられている。(了)
出典元:The Guardian:Piracy and armed robbery surge in the straits of Malacca and Singapore – report(8/26)