ポール・ペロシ氏事件の犯人は極右思想の男、尚もはびこる陰謀論
先日、アメリカの下院議長の夫が自宅で襲われた事件で、犯人の思想などが明らかにされたが、それを打ち消す陰謀論が相変わらずはびこっているという。
犯人の今まで言動を調査
10月28日の早朝(現地時間)、ナンシー・ペロシ下院議長の夫、ポール・ペロシ氏がカリフォルニア州にある自宅で襲撃され、大けがを負った。
この事件で警察は、David Depape容疑者(42)を逮捕。ジャーナリストらも、すぐに容疑者がどんな思想の持つ主なのかを調査した。
事件のあった日にはすでに「ロサンゼルス・タイムズ」紙が、Depape容疑者のネット上での言動を取り上げている。
「QAnon」についても言及
その記事によればDepape容疑者の個人ブログには、「歴史の操作」や「ホロホークス(ホロコースト・ユダヤ人大量虐殺はデマ)」などの言葉が書かれ、極右が好んで利用する掲示板「4chan」についても言及されていたという。
また同容疑者は、新型コロナ・ワクチンに関わる陰謀論や、ウクライナ戦争はユダヤ人が土地を買うための策略であるといった内容のビデオも投稿していたそうだ。
さらにDepape容疑者は、トランプ前大統領が、児童性愛団体を運営している悪魔崇拝のエリート集団と戦っているとする陰謀論「QAnon」についても言及。
ブログでも「Qはトランプ自身か、トランプのインナーサークルにいるスパイ(二重スパイ)かのどちらかだ」と書いていたという。
保守系の議員や著名人までも陰謀論
しかし、このような実態が明らかになった後も、右派の上院議員や著名人、報道機関までが、Depape容疑者の思想に疑問を投げかけ、別の陰謀論を展開し始めた。
虚偽の記事を掲載することで有名なウェブサイト「Gateway Pundit」は、この事件を「リベラル(民主党)のもう一つの嘘」と呼んでいる。
また保守派の活動家、ディネッシュ・ドスーザ氏も「これまでのところ、公開された(容疑者の)アカウントについては何も意味をなさない」とツイートしたそうだ。
さらにテキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は、Depape容疑者を「バークレー出身のヒッピー・ヌーディスト」と呼び、この事件が右翼思想に起因するという考えを「ばかばかしい」と切り捨てたという。
ツイッターの新しいオーナーであるイーロン・マスク氏も、虚偽の情報を掲載することで悪名高いウェブサイトからの、薄気味悪い記事をリツイート。トランプ前大統領の長男であるトランプ・ジュニア氏も、この記事と同様の主張をシェアしたそうだ。
その後、それらの投稿は削除されたが、保守的なメディア関係者は、いまだに陰謀論を繰り返し唱えつづけているという。またツイッターにも「ポール・ペロシ氏にはゲイの愛人がいた」といったデマも多数投稿されている。
「政治的な動機に基づいた事件」
警察の取り調べによれば、Depape容疑者は「ナンシー(・ペロシ)を人質にして話をするつもりだった」と話しているそうだ。
また同容疑者は、「民主党がついた嘘」についての「真実」を話さないなら、ナンシー・ペロシの膝頭を折るつもりだった、と捜査官に供述しているという。
このことから捜査関係者は、事件がナンシー・ペロシ下院議長を狙った犯行であり、「政治的な動機によるもの」だと断定した。
真実をつぶし、自分たちの政治的な目的のためにばらまかれる「陰謀論」。無論、このような事態の背景には、SNSなどプラットフォーム側の問題点も含まれている。(了)
出典元:LATimes:Accused Pelosi attacker David DePape spread QAnon, other far-right, bigoted conspiracies(10/28)
出典元:NPR:Why conspiracy theories about Paul Pelosi’s assault keep circulating(11/2)