人類が約40万年前から火を起こしていた可能性、英の遺跡で痕跡を発見

イギリスの遺跡で調査が進められ、人類の祖先が遥か以前から、火を起こす技術を習得していた可能性が示された。
イングランド東部の遺跡を調査
その調査が行われたのは、イングランド東部、サフォークのBarnham村にある、廃坑となった粘土採掘場にある遺跡とされている。
研究者らは2013年からこの遺跡で調査を進めており、先日「ネイチャー」誌に発表された最新の研究論文の中で、人類の祖先が約40万年前から火を起こしていた痕跡が発見されたと主張した。
そもそも、古代人類が100万年以上前から「自然」の火を利用していたことは知られているが、これまで人類が自ら火を起こした最も古い明確な例は、5万年前のフランス北部の遺跡からしか発見されていない。
そのため今回の研究結果が事実だとすれば、従来知られていたよりも約35万年も早く、人類の祖先が火を起こす技術を習得していたことになる。
黄鉄鉱を発見、地面にも火の痕跡
大英博物館の旧石器時代コレクション担当の学芸員で、この研究の共同リーダーを務めたニック・アシュトン教授によれば、この遺跡で火の痕跡を最初に見つけたのは、2014年頃だったという。
ただ当初は、この痕跡が野火を利用したものなのか、それとも人間が焚き火を起こしたものなのかは明らかではなかったそうだ。
しかし、その後、黄鉄鉱の破片2つを発見。黄鉄鉱は天然の鉱物で、火打ち石(フリント)に擦り付けると火花を散らすという。
さらに土壌分析の結果、遺跡の同じ場所で繰り返し火が使用され、赤くなった粘土の塊が700℃以上に加熱されたことも明らかになった。
これらの事実を合わせると、人々がこの場所で何度も焚き火、あるいは炉床を使用していた可能性が強く示唆されたそうだ。
この研究には関与していない、カナダ・ケベック大学の考古学者、Ségolène Vandevelde氏も、今回の発見は説得力があるとし、次のように述べている。
「これらの火の痕跡と、関連した黄鉄鉱の発見は、まさに花を添えるものであり、人類による火起こしの最も古い例を示しています」
火を使ったのはネアンデルタール人
ただし、この地で火を使ったのは、現生人類のホモ・サピエンスではないと考えられている。
ホモ・サピエンスは約10万年前に、アフリカから世界へ進出していったと考えられ、40万年前にはイギリスに到達していなかったという。
またイングランド南東部のケントで発見された、40万年前の化石には初期ネアンデルタール人のDNAが保存されており、この化石に基づき、今回の遺跡周辺に住んでいたのも、初期ネアンデルタール人だった可能性が高いと考えられている。
大英博物館の旧石器時代の考古学者で、今回の調査を共同で率いたロブ・デイビス博士は、次のように述べている。
「今回の発見の意味は、計り知れません。火を起こし、制御する能力は、人類史における最も重要な転換点の1つであり、実用的かつ社会的な利益をもたらし、人類の進化を変えました」(了)
出典元:The Guardian:Humans made fire 350,000 years earlier than previously thought, discovery in Suffolk suggests(12/10)

























