オスのヒナの殺処分を止めるため…独の研究所がニワトリの卵の性別を見分ける技術を開発
ニワトリのオスのヒナを殺さなくて済む技術が、ドイツの研究所によって開発され、注目を集めている。
卵の内部のヒナの性別を見分ける
その研究所とは「Seleggt(雄の雛殺処分解決方法研究所)」。この研究所の科学者はニワトリの卵が孵化する前に、内部にいるヒナの性別を見分ける技術を開発したという。
このプロセスでは受精した後、約9日(7日から10日)でヒナの性別を見分けることができ、オスの卵は動物のエサとして加工され、メスの卵だけ21日間保育器に入れられ、やがて孵化することになるそうだ。
これにより多くのオスのヒナが、生きたまま殺処分されずにすむと言われている。
この技術に携わった「Seleggt」の所長であるLudger Breloh博士は、次のように語っている。
「もし人が産み落とされた卵の性別を見分けることができれば、生きたままオスのヒナを処分することを完全に止めることができます。(略)今日、メスのニワトリはドイツの農家で卵を産み、どんなオスも殺すことなく、育てられています」
40億羽のヒナが毎年、殺されている
実は毎年、世界中で40億羽から60億羽のものオスのヒナが、経済的な理由から殺処分されているという。
あるヒナたちは窒息させられ、またあるヒナは生きたまま、粉砕機や裁断機ような機械に投げ込まれ、やがて爬虫類などのエサとして加工されると言われている。
また人間は主に「卵を産ませる」「肉を食べる」という2つの目的でニワトリを育てているが、このような目的で育てられる動物の半数は、不必要なものとも考えられているそうだ。
特にニワトリのオスのヒナは肉として育てても、コストに見合うほど早く成長しない。そのためオスのヒナは大量に殺されているとか。
98.5%の正確さで見分けられる
Breloh博士によれば、卵の状態で性別を見分ける技術を大きく飛躍させるきっかけとなったのが、ドイツのライプツィヒ大学の研究者に連絡を取ったことだという。
その大学のAlmuth Einspanier教授は、ケミカル・マーカーを開発。それは妊娠テストに似たもので、メスの卵に多く存在するホルモンを検知できるというもの。
そして産み落とされてから9日後、受精卵から取り出された分泌液を混ぜ、マーカーが青に変わればオスの卵、白に変わればメスの卵と、98.5%の正確さで見分けることができると言われている。
レーザーを使い卵に穴を開ける
しかし最大の問題だったのは、いかにして卵から分泌液を抽出するかということ。
卵は保育器から2時間以上出すことはできないため、素早く、衛生的に、卵を損なうことなく液体を抽出しなければならない。
そこでBreloh博士らはレーザービームを採用。それを卵の外殻に当てて焼き、0.3mm(0.33mmとも)の穴を開け、空気圧を利用して液体の雫を抽出することに成功したという。
しかもこのプロセスは1つの卵につき、わずか1秒しかかからず、触れることもなく衛生的に分泌液を抽出できるそうだ。
今年の初め、「Seleggt」ではこの技術を使い、最初のメスの卵を孵化させることに成功。また今年の11月には、「オスのヒナを殺さずに済む卵」として、ベルリンのスーパーで販売され人気が出たとされている。
「Seleggt」では2020年までに独立した孵化場に、この技術を導入することを計画しているという。(了)
※原文では「Seleggt」を企業と表現しているが、調べた結果、研究所と判断したため、この表現にした。
※また動画と原文では数値などわずかに矛盾するものがあるが、原文のデータを採用した。
出典元:The Guardian:World’s first no-kill eggs go on sale in Berlin(12/22)
出典元:MailOnline:World’s first no-kill eggs go on sale in Berlin after German scientists make breakthrough that could put an end to culling of billions of male chicks worldwide(12/23)