イラクで4000年前の未知の古代都市を発見、メソポタミア文明との関わりも?
イラクで4000年ほど昔のものとみられる古代都市の遺跡が発見され、注目を集めている。
建物の土台など様々な遺物が見つかる
古代都市の遺跡が発見されたのはイラク北部、ザグロス山脈に位置するクルド人自治区内の“Kunara”と呼ばれる地。
故サダム・フセイン大統領の失脚と、それに続く地域における緊張が和らいだ近年、同地区は研究者に向けて開かれるようになっており、2012年から2018年にかけてフランスの調査団が発掘を行っていたという。
遺跡では石でできた建物の土台や、石板をはじめとする様々な遺物が発見されているとのことだ。
山脈内で中心的な役割を果たし繁栄か
この発見については考古学者の間においては“小さな革命”と呼ばれるほど、大きな注目を集めている。
その理由として挙げられるのは、今回発見された古代都市はメソポタミア文明における最初の帝国である“アカディア帝国”の時代からその西端と境を接しており、ザグロス山脈において当時中心的な役割を果たしていた可能性が考えられているためだ。
遺跡では遺物と共に牧畜が行われていた証拠や農業のための潅がい、さらには小麦粉などをはじめとする物品の取引が記録された石板などが発見されている。
また発見された石板には、現在のトルコからペルシア湾の南端から延びる地域で用いられていたものと類似した記号が彫られていたとも伝えられている。
さらに発見された遺跡においては、同古代都市が非常に繁栄していたことを示す複数の証拠も発見されている。
遺物として見つかったものの中には黒曜石でできた矢じりがあったとのこと。しかし当時において黒曜石は、数百キロも離れた現在のトルコ位置するアナトリアから運ばれた比較的珍しい素材だ。
また遺物の中には裕福な古代都市において見られることのあった、装飾が施された陶磁器の欠片も含まれており、これらの存在などから新たに発見された都市は繁栄していたとみられている。
古代都市とメソポタミア文明の関係性示す石板
一方、今回の発見された遺物の中で最も興味深いのは石板だ。
発見された複数の石板は紀元前22~21世紀の間のものとみられ、これはイラクのクルド人自治区において見つかったものとしては最古とのこと。
それにはシュメール語で王や統治者を意味する“Ensi”との肩書を持つ地域における指導者と、その農業の発展をもたらした統治についての詳細が記されているという。
それだけではなく、これについてくさび型文字の専門家Phillipe Clancier氏は、石板に文字を記入した人物がアカディア帝国とシュメール人、さらにはメソポタミア文明の文字について精通しているとみられることを指摘している。
このような言語学的な小さな情報は、政治的力関係を解明する手がかりになることもあるそうだ。
共通の言葉は文明間における服従や、あるいは文明同士が類似した統治モデルを持っていたなどといった、古代都市とアカディア帝国という巨大な隣国の間における力関係を反映したものである可能性もあるという。
また石板においてはこれまで発見されたことのない独自の単位も記されており、これは同古代都市の独立性を示している可能性も指摘されている。
尚、発見された古代都市の名前はまだ判明していないとのこと。
調査団は今後も遺跡へと戻り、研究を続けていく意向を示している。
今回、新たに発見された4000年前の古代都市。その謎が少しずつ明らかにされるのを心待ちにしたいところだ。(了)
出典:Newsweek:Ancient Lost City of Mountain People Unearthed at Gates of Mesopotamia’s First Empire(3/26)
出典:Fox News:Mysterious 4,000-year-old lost city discovered(4/2)